社長の離婚の場合、養育費の金額は何を考慮して決まるのでしょうか。
目次
養育費の考え方
離婚により夫婦関係は破綻しても、それが親子関係の破綻を意味するものではありませんし、離婚後も親として子どもを扶養する義務は継続します。協議離婚をする場合、①法律上の下限(裁判所の標準算定表に基づく金額)を出発点として、②子どもが離婚後の生活に困窮しない適正額を夫婦で話し合うことが必要になります。
他方で、夫婦間での葛藤が大きい場合、裁判所の調停や審判という手続きで法律上の下限額(算定表の金額)を決める場合もあります。
養育費の基準額(下限額)
本項では、養育費の法律上の下限額(算定表)に関する考慮要素を考えてみます。
収入
養育費を決定する際、まずは両親の相対的な収入が重要な要素となります。夫の収入が高いほど養育費の金額も高くなり、逆に妻の収入が高いほど養育費の金額は低くなります。収入は、役員報酬や給与所得者の場合は源泉徴収票、自営業者の場合は確定申告書から認定できます。
子どもの年齢と人数
子どもの年齢や人数も養育費の額に影響を与えます。年齢が高くなるにつれて、教育費や生活費が増加するため、算定表では、子どもが15歳未満から15歳以上になるタイミングで、養育費の額も高くなります。
生活費
子どもの生活費も重要な要素です。例えば、私立学校に通っている場合や特別な医療費(歯科矯正を含む)がかかる場合は、通常の生活費よりも多くの費用が必要となり、両親の収入按分での負担を求められることが多いです。
経営者であることによる特殊事情
以上については、一般的な養育費の考え方になりますが、社長の場合の留意事項としては以下の3点が挙げられます。
多額の報酬を得ている場合
算定表の場合、夫が高額所得者であれば青天井に養育費の金額も増えるという方式は採られておらず、収入2,000万円を上限として養育費を算定します。ただし、例えば夫側に不貞行為などの有責性がある場合、年収2,000万円上限の壁に縛られず、柔軟に養育費を算定した上で離婚成立を図ることもあります。
少額の報酬を得ている場合
仮に事業が成功している場合でも、社長自身が役員報酬を低く設定し、または、個人事業主として課税所得を低額にしている場合があります。そのような場合でも、原則として客観資料から認定される収入額に応じた養育費の金額となります。ただし、例外的に社長の源泉徴収票や確定申告書の信用性に疑義が生じる場合、収入額の認定に争いが生じるケースもあります。特に、自身の役員報酬や事業収入の急激な減収が生じる場合、養育費を下げるという不当な目的で減収をしているとして、減収前の収入を基準に養育費を決定することもありますので注意が必要です。
事業融資などで借金がある場合
個人事業主の場合、経営のために借り入れをして、事業資金返済と養育費の両立が難しい場合もありますが、原則、借金の存在は養育費減額事由として考慮されることはありません。しかし、例外的に、その借金が実質的には家族の生活費のために借り入れられたものであり、妻も借金から利益を受けており、かつ、借金を考慮しないことが不公平と言えるような場合、一定程度減額事由として考慮される余地もあります。
まとめ
社長が離婚する場合には、高額所得や低額所得など、社長の生活レベルに鑑みると算定表の養育費の金額が不公平というケースも多くありますので、どのような調整を図るのがベストなのか、一度専門家にご相談することをお勧めします。
※この記事は、2025年2月28日に作成されました。