マンション管理費を滞納している組合員への対応方法を教えてください。
訴訟提起
管理費を強制的に回収するためには、その請求権の存在を公証する「債務名義」(民事執行法22条、例:確定判決や和解調書など)が必要とされています。これを得るための一般的な手段として、滞納者を被告として訴訟を提起することになります。
訴訟提起をする場合には、事前に総会の決議を経る必要があります。ただし、多くの場合、理事会の決議によって、理事長が管理組合を代表して訴訟等の法的措置を追行することができる旨が管理規約に定められています。その場合には、理事会の決議だけで迅速に手続を進めることができます。
滞納期間や、従前の滞納の有無およびその際の滞納者の対応、訴訟における滞納者の応訴態度等の事情によっては、現在滞納している金額だけではなく、将来の管理費(滞納者が専有部分の区分所有権を喪失するまで)についても、あらかじめ判決を得ておくことができる場合があります。これにより、再度管理費を滞納した場合にも直ちに強制執行手続を行うことができます。
強制執行
訴訟で判決が出ても滞納者が支払わない場合には、強制執行手続に移行します。主な強制執行手続は以下のとおりです。
不動産競売
滞納者が所有している不動産(管理費を滞納している専有部分に限りません)に対する競売申立てができます。ただし、不動産に価値以上の抵当権が設定されており、剰余を生じる見込みがない場合には、競売手続が取り消されることになります(無剰余取消し)。
債権執行
滞納者の預貯金、勤務先給料、賃料債権等に対する差押えが典型例です。
なお、差押手続のために必要な預貯金口座(銀行名・支店名)や勤務先、賃借人といった情報は、管理組合側で調査して特定する必要があります。
動産執行
滞納者が有する動産に対して差押えをすることができます。もっとも、そのほとんどが差押禁止動産とされていることや動産自体にあまり価値がないことが多く、実効性はあまりありません。
先取特権
滞納管理費に係る債権は、先取特権の被担保債権とされています(区分所有法7条)。そのため、訴訟手続を経ることなく、専有部分の競売申立てや専有部分の賃料債権差押えを直ちに行うことができます。ただし、不動産に価値以上の抵当権が設定されている場合には、競売手続が無剰余取消しとなる可能性がありますので、事前によく調査をする必要があります。
まとめ
以上のとおり、滞納者が任意に支払わない場合には、法的手続により回収を図ることになります。その場合、多くの管理組合は弁護士等に依頼することが多いと思いますが、以下のような資料をあらかじめ準備してご相談頂くと、スムーズに話が進むと思います。
- 管理規約
- 現在の管理費金額が決まった総会議事録
- 建物登記簿謄本
- 滞納管理費の一覧表
- 役員や理事長を選任した総会・理事会の議事録
- 滞納管理費を督促した書面
※この記事は、2024年2月6日に作成されました。