契約を期間の途中で解除したいのですが、可能ですか?
契約期間途中の解除の種類
契約期間途中の解除は、その根拠によって分類できます。具体的には、①あらかじめした約定した条項の発動による解除(中途解約条項による解除)、②民法その他法令による解除(法定解除)、③解約時点における合意による解除(合意解除)です(③は、講学上、解除と異なるものであるといわれていますが、質問の回答に関わりますので、本稿では解説の対象とします。一方で、解除の意思表示を伴わず、一定の事実が生じたときに当然に契約が終了する失権約款というものもありますが、こちらは本稿の解説の対象にはしません。)。
①②③の解除はいずれか1つしかできないとは限らず、両立する場合があります。その場合、いずれの方法によるのがよいかを比較検討して対応することになります(どれか1つを選択する場合もあれば、主位や予備など、求める順位を定めて対応することもあります。)。
各解除のメリットとデメリット
①中途解約条項による解除、②法定解除、③合意解除には、それぞれメリットとデメリットがあります。
①中途解約条項による解除と②法定解除は、いずれも契約書や法令に明文の根拠があり、要件さえ満たせば相手方の同意の有無にかかわらず、解除の意思表示のみで発動できます。解除の効力については、契約書や法令であらかじめ定められた内容によって効力が拘束されます(①については契約で定められた効力、②については法令で定められた効力になります。ただし、①について、契約書に記載がないときに法令上の効力によることがあります。)。
他方で、③合意解除については、相手方と改めて合意することが必要です(契約時点とは別に、解約時点で改めて合意する必要があります。契約書とは別途の覚書等を作成して対応することになります。)。しかし、その効力については、例えば解約時期や金額、目的物の返還対応等、解除時点の状況に応じた柔軟な内容を定めることができます。
実務対応時のポイント
まず初めに着手すべきは契約書の確認です。契約書の中に中途解約条項があるか、中途解約条項があるときはその効力がどのような内容となっているかを確認します。その上で、法令や判例の確認や相手方との従前のやり取り等の情報を収集・整理し、解除を求める側のニーズを踏まえ、①②③のいずれの方法によるのがよいか(あるいはどのような順位付けを想定するのがよいか)、相手方に対してどのようにアプローチするのがよいか等を検討することとなります。
なお、解除の意思表示や合意解除は、口頭ではなく文書(①②については配達証明付きの内容証明郵便等、③については覚書等)によるべきです。特に①②については、事後のトラブル(紛争)に発展することもあるため、有利に紛争解決をするためにも文書で証拠化しておくことが大切です(逆にいえば、文面にミスがあれば、それも証拠として残ってしまうため、慎重な検討が必要となります。)。
まとめ
契約期間途中の解除自体は、取引をしていれば個人法人を問わず一般的に遭遇することがある事態です。もっとも、解除を求められた相手方からすれば、容易に納得しづらいことであることも多いため、法的に大きなトラブルの入口になりやすいものでもあります。したがって、トラブルを避け、あるいはトラブルになっても解決しやすいように、契約書の作成段階から入念な確認等をしておくことが大切です。
一方で、どれだけ準備をしてもトラブルを免れられない場合もあります。トラブルになった場合は、早めに弁護士に相談するのがよいと考えます。
※この記事は、2024年10月16日に作成されました。