TOPQ&A記事カーボンニュートラルは中小企業も取り組むべきでしょうか。
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カーボンニュートラルは中小企業も取り組むべきでしょうか。

最近「カーボンニュートラル」という言葉をよく耳にするようになりました。こういった取り組みは大手企業が行うイメージがあるのですが、中小企業も取り組む必要はあるのでしょうか。また具体的にどのように取り組むべきなのでしょうか。
中小企業も「カーボンニュートラル」に向けた取り組みをする必要はあります。特に、大手企業のサプライチェーンの中で取引をしている中小企業にとっては、近い将来、取引を拒絶されてしまうリスクもあり、対応は急務です。取り組み方法としては①排出量削減、②吸収、③オフセットの3つが挙げられます。
回答者
佐山 亮介 弁護士
井澤・黒井・阿部法律事務所

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、簡単に言えば、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。

人が生活する上でCO2をはじめとした温室効果ガスを一切排出しないというのは困難ですが、排出量の削減や吸収量の増加を行い、排出量が吸収量を上回らないようにすれば、実質的には温室効果ガスの増加を防ぐことができる、というのが、カーボンニュートラルの基本的な考え方です。

気候変動問題の解決に向けて2015年に採択されたパリ協定では、各国がカーボンニュートラルを達成することが合意され、202010月には、日本政府でも、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言されました。こうした流れの中で、カーボンニュートラルの考え方はESG投資などにも浸透し、資金調達や販売利益にも直結する課題として、大企業を中心に、カーボンニュートラルへの取り組みは加速してきました。

 グリーンガイドラインによる取引拒絶のリスク

問題は、この大企業の取り組みは、自社のみにかかわらず、サプライチェーン全体に及んできている、ということです。

1つの商品について考えると、その商流は、原材料等を調達する上流と、商品を製造する自社及び下請会社、商品販売後の下流といった具合に製造段階が分かれており、これら全体を通して温室効果ガスが削減されなければ、その商品がカーボンニュートラルを達成したとは評価されません。

そうなると、大手企業のサプライチェーン上で温室効果ガスが削減できない中小企業は、悪く言えば“お荷物”として、サプライチェーンから外されてしまう可能性が出てきます。

従来、正当な理由がなく取引を拒絶することは、独占禁止法上の「不公正な取引方法」に当たり、禁止されてきました。

しかし、公正取引委員会は、2023年3月31日に「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(通称:グリーンガイドライン)を策定・公表し、その中で、

事業者が、自己のサプライチェーン全体における温室効果ガス削減を目的として、独自の判断で、自社が設定した一定の温室効果ガス削減目標を達成することができない事業者と取引しないことを決定するなど、グリーン社会の実現に向けて合理的な範囲で行われる単独の取引拒絶は、独占禁止法上問題とならない(グリーンガイドライン46頁)。

と明記しました。

これにより、温室効果ガスが削減できない中小企業をサプライチェーンから外すことは独占禁止法にも違反しないという考え方が確立してしまいました

したがって、サプライチェーンから外されないためにも、カーボンニュートラルへの取り組みは、中小企業にとっても、不可欠な課題となりました。

カーボンニュートラルへの取り組み方法

カーボンニュートラルへの取り組み方法には、①排出量削減、②吸収、③オフセットの3つがあります。

①排出量削減の具体的な方法としては、省エネや再生可能エネルギーの利用が挙げられます。②吸収の具体的な方法としては、植林等が考えられます。③オフセットとは、①②について余力のある企業から「カーボン・クレジット」を買うことで、自社ではやり切れない部分を埋め合わせることです。

このうち、①排出量削減のための省エネは、予算のない中小企業にも、コストを掛けずに取り組むことができる一番身近なカーボンニュートラルです。

まとめ

今回は、中小企業もカーボンニュートラルに取り組む必要があるのか、という観点から解説をしました。

本記事をきっかけに、まずは、できることから始めてみる、という精神で、カーボンニュートラルに取り組んでいきましょう。

 

この記事は、2024年10月16日に作成されました。

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