オフィスを借りる際の賃貸借契約について、注意すべき点を教えてください。
また、特約もよく確認しましょう。物件の安全性、設備や環境等についても確認すべきです。信頼できる仲介業者の仲介や貸主の信用性も、将来のトラブル防止の観点からは重要なポイントと考えられます。
契約書における注意すべき条項
不動産取引は、様々な要因から紛争が生じますので、トラブルを完全に防止するのは困難です。建物賃貸借契約は、利用条件、将来生じた事項の処理の約束を定めるものですので、よく内容を確認しておくことがトラブルの防止に役立つと考えられます。
まず、更新の可否は重要です。更新がない契約(いわゆる定期建物賃貸借契約)の場合、期間満了後も利用を継続するには、賃貸人の了解(再契約の合意)を要します。更新可能な場合は、更新の拒絶に正当な事由が必要になり(借地借家法28条)、正当事由を満たすのは難しく、立退料も通常要しますので、原則として更新ができます。
中途解約の条項も重要です。条項がなければ、期間満了まで借り続ける必要があり、中途で退去した場合、その後の賃料支払義務や違約金の発生が考えられるからです。
賃料の自動改定条項も合理的なものは原則有効になります。また、共益費の費用負担および増加可能性や工事の負担区分(特に賃貸人指定業者による工事範囲)なども、将来的な金銭負担に影響してきますので、これらの条項も確認しておくべきでしょう。
特約事項は、物件や賃貸借契約での特有の制限等が記載されている場合がありますので、よく確認すべきです。
物件に関する事項
建物は、安全性がないと地震によって利用に支障が生じる可能性があります。特にいわゆる旧耐震建物(昭和56年5月までの基準の建物)の場合は、耐震診断の内容を確認すべきです。設備等の劣化によっても利用に支障が生じますので、設備更新時期等の設備の状況も、建物の状況と併せて確認したいところです。また、ハザードマップにおける土砂災害、水害の可能性も考慮すべきでしょう。
賃貸人の信用性、仲介業者の役割
物件に抵当権が設定されている場合、賃借後に抵当権が実行され、競売となった場合、物件を取得した買受人に賃借権を主張することはできません。6カ月の明渡猶予が認められますが、その後退去義務があるのです。実務上は買受人との間で賃貸借契約を締結できる場合がありますが、敷金の預託は通常求められます。すなわち、賃貸人の信用性が不十分である場合は、競売による退去や敷金が返却されないなどの可能性が高まるので注意が必要です。
信頼できる仲介業者に仲介してもらうと物件の状況などの調査、説明をしてもらえるため、リスクの軽減に役立つでしょう。仲介業者は、気になる条件等があれば賃貸人との交渉も行ってもらえ、また助言も受けられるので賃貸借契約の締結にあたっては重要と考えます。
まとめ
不動産取引では、様々な要因から紛争が生じる場合があり、個別性もあります。そのため上記の各事項等を注意し、特に重要な契約の場合は、専門家に相談してみることもトラブル防止に資すると考えます。
※この記事は、2024年2月8日に作成されました。