民事信託で次男に財産を信託したいです。
具体的にどのような手続きを進めるべきでしょうか。
民事信託とは
委託者が自分の財産の一部を受託者に信託し、受託者は信託目的に従い、受益者のために信託財産を管理・処分するものです。信託目的により様々なスキームが考えられますが、本件は、委託者は父(私)、受託者は次男、受益者は父と長男というスキームが考えられます。本件ご質問は、父が認知症になった場合の財産管理が主なもので、福祉型信託、すなわち高齢者や障害者の生活支援のための信託を検討していると考えられます。なお、民事信託は、信託財産の承継(実質的に相続と同じ効果)についても信託契約で定めることができます。
民事信託とその他の制度に相違点
そもそも、信託といえば、信託銀行が扱っている商品を思い浮かべる人も多いことかと思います。そして信託銀行が扱う商品に、特定贈与信託があり、特定障害者のために、家族(本件では父)が特定障害者扶養信託契約を信託銀行と締結するもので、最大6000万円贈与税が非課税となります。もっとも受益者となるための特定障害者の要件があり、本件の長男がその要件に該当するかわかりません。一方、民事信託は、このような受益者の要件はなく、また特定贈与信託より信託できる財産は多く、ある程度柔軟に設計することはできます。また、民事信託は、設定時に、信託財産の管理処分権は、委託者から受託者に移りますが、受益者が委託者と同一の場合、税法上は贈与とはならず、設定時に贈与税はかかりません。
民事信託の留意点
ある程度柔軟に設計できるのが、民事信託のメリットですが、留意しなければならないこともいくつかあります。例えば、以下の留意点があります。
- 一度民事信託に組み入れた財産は、委託者の相続財産から除外されますが、特定の相続人に実質的に過大な経済的利益を与えるような信託契約は、裁判で争われたときに、遺留分侵害を理由にその条項は無効であると判断される可能性もあります。
- 農地等信託できない財産もあります。
- 税金についても例えば、信託財産に組み入れた不動産と組み入れなかった不動産の損益通算ができないということもあります。また、委託者と受益者が異なる場合は、贈与税が課される可能性が高く、本件の場合、長男の受益権の範囲を父の扶養範囲内とする等の工夫が必要です。
- 信託口座を開設する際に、金融機関によって条件が異なり、例えば弁護士や司法書士等の士業が作成した公正証書の信託契約書でなければ口座開設しない、あるいは最低預金額を定めている等の通常の口座開設より厳格な条件を定めている場合があります。
まとめ
民事信託は、便利ではありますが、逆に留意しなければならないことも多いですので、ある程度ご意向が固まった時点で、専門家(弁護士、税理士、司法書士等)に相談することをお勧めします。
※この記事は、2025年2月7日に作成されました。