趣味のコレクションについて、遺言で処分方法を決められますか?
「終活」の一環として、生前整理を検討されている方も多いのではないでしょうか。
財産の生前整理では、自分の財産を処分するものと後世に遺していくものとに整理していくことになりますが、中でもコレクションしてきた美術品の扱いには頭を悩ませるかもしれません。「できれば生前中は自分の手元に置いておきたい。でも、自分の死後、大切なコレクションが大切に扱われるか心配」というお悩みをお持ちの方はよくいらっしゃいます。美術品は、その性質上、一見して価値が明らかでない場合も多いため、ご家族に処分を任せるだけでは適切な管理がされない場合が少なからずあります。そこで今回は、大切なコレクションを適切に承継していく方法について解説します。
遺言で美術品を承継する際に注意すべき点
目録の作成
大切なコレクションを後世に遺すため、「遺言」を残すという方法があります。
遺言を残す場合、まずお手持ちの美術品の一覧を整理しておきましょう。その際、作品名・作家名・制作年・サイズ・素材・エディション番号・取得経路(購入先や入手時期など)・鑑定書や保証書の有無といった情報を作品ごとに整理しておくと、後の作業がミスなく円滑に進みます。また、あらかじめ評価額を把握したり、保管や処分の方法についても整理をしたりしておくことで、後の手続でのトラブルを回避できます。
実際に遺言を作るにあたっては、上記の情報を使って「目録」を作ることで、遺産の特定を正確かつ簡便に行うことができます。遺産の特定を正確に行うことは、例えば同じ作家・作品名の作品がコレクションの中に複数ある場合、どの作品かをそれぞれ特定するために極めて重要になります。
公正証書遺言の活用
これらの整理や遺言書・目録の作成は、ご自身で行うこともできますが、遺言書は法律上厳格に記載方式が定められており、不備があるとせっかくの遺言が無効となってしまいます。また遺言を失くしたといった事態を避けるためにも、いわゆる「公正証書遺言」で遺言を作成することを専門家としてはお勧めします。
死後の美術品の処分について
死後の美術品の処分の方法としては、ご遺族や大切なご友人に作品を譲り渡したり(遺贈)、美術商へ又はオークションで売却し、換価したお金を分配するという方法があります。いずれの方法でも、素早く確実に処分ができるよう、「遺言執行者」を定めることが重要です。遺言執行者は、裁判所に申し立てて選任してもらうこともできますが、特に美術品が遺産にある場合、その処分に精通した信頼できる方を遺言の中で指定しておくことが重要です。弁護士など士業を遺言執行者に指定することも有効です。
美術品を後世に遺すために遺言以外にできる対策
コレクションを後世に遺す方法としては、遺言書を作成する以外に、①生前に信託契約を結び、美術品の管理運用を任せる、②美術館に寄贈をする、などの方法もあります。美術品を公共団体や美術館に寄付・寄贈する場合、税制上の優遇措置を受けられる場合もあります(詳細は税理士等にご相談ください)。
いずれの方法をとる場合でも、生前にコレクションが破損したり劣化したりしないよう適切な保管・メンテナンスを行い、また保険に加入するなどしてリスクに備えることが重要です。
まとめ
美術品コレクションを後世に適切に遺していくためには、預貯金など通常の財産と違った配慮が必要になります。美術品の承継に強い専門家(弁護士など)に相談し、ご自身の状況や希望に合わせて適切な方法を選択することで、早く着実にコレクションの整理について道筋をつけることが可能になります。
※この記事は、2025年1月22日に作成されました。