退職代行業者から連絡が来ました。
また、一般の退職代行業者(民間企業)より、直接従業員へ連絡しないよう求めるケースがありますが、そのような要請に法的拘束力はありませんので、会社から従業員に直接連絡を取っても法的に問題はありません。
目次
退職代行業者から連絡が来た際の会社の対応について
退職代行業者から連絡が来た場合の対応すべき事項のうち、特に通常の退職時と異なる留意点は、以下のとおりです。
②委任状等で従業員の意思を確認する
③退職日の決定とともに退職日までの扱いを検討する
④回答書を作成する
上記①~④による実際の対応時のポイント
以下、特に通常の退職時と異なる留意点につきまして説明します。
①退職代行の身元及び要求事項を確認する
退職代行業者が、a.弁護士b.労働組合c.一般の退職代行業者(民間企業)のどこかで対応が変わります。相手方が「どこまでの権限を持っているか」「非弁行為に当たるか、違法ではないか」などを確認してください。
a.弁護士は、従業員の代理人として、退職に関する全ての交渉や付随手続を行えます。そのため、問題なく交渉していただいて結構です。
b.労働組合(退職代行ユニオン)は、いわゆる合同労働組合の一種で、弁護士ではないものの、団体交渉権を持つ労働組合であり、基本的には会社との直接交渉が認められていますので、交渉自体は問題なく行っていただいて結構です。なお、交渉を超えて、裁判で代理人を務めることまではできません。
c.一般の退職代行業者(民間企業)は、弁護士資格を持たない一般企業で、従業員の代わりに会社へ退職したいことを伝えるだけの「使者」の位置付けであり、「代理」権まではありません。そのため、一定の交渉事項がある場合において、会社と交渉を行うことは非弁行為に当たるので対応できません。
②委任状等で従業員の意思を確認する
特に上記のc.の一般の退職代行業者(民間企業)の場合、従業員が退職代行サービスを依頼したのか確認するため、委任状等の提示を求めましょう。正式な依頼内容を示す書類がない場合は、「従業員本人の意思であることの裏づけが取れない限りは、退職手続きを進めることはできない」と伝える必要があります。
③退職日の決定とともに退職日までの扱いを検討する
退職日については、労働者の希望、会社の就業規則、民法などに基づいて決定していきます。
この点、退職代行業者を利用するケースでは、通常、出勤できる状態とは考えにくいため、結果的には就業規則の規定内容等に関わらず、従業員の希望通りの退職日を認めざるを得ないケースが多いと思料します。
また、この際に、年次有給休暇により処理するか等も、従業員の意向を踏まえ決定することになります。
④回答書を作成する
会社の意向については、書面で送るべきです。回答書を書面で作成し送付することで、のちにトラブルが起きた場合でも客観的な証拠として活用することができるためです。回答書には例えば、退職を認めることや、退職日までに行う引継ぎの件、会社の連絡先窓口について等を記載することが多いでしょう。
本人の意思の確認のために、直接連絡を取っても良いのかについて
上記①で退職代行業者がc.一般の退職代行業者(民間企業)の場合、従業員本人への連絡を禁止する権限はありませんので、会社から従業員に直接連絡を取っても法的には問題はありません。
他方、退職代行業者がa.弁護士b.労働組合には、本人に直接連絡を取らない方がよいです。
まとめ
退職代行業者の身元によって対応が異なります。c.一般の退職代行業者(民間企業)が交渉を行う場合は違法でもあり、トラブルにならないためにも、「従業員本人の意思なのか」や「退職代行業者が交渉を申し入れてきているのか」などの正確な情報を確認し、適切な対応を心がけましょう。
※この記事は、2024年10月10日に作成されました。