コスプレグッズを制作し、販売したいのですが、法的に問題はありますか?
また、仮にこれらの法律に違反して制作・販売等を行った場合、販売等の差し止めや損害賠償請求を受けるリスクもあります。
著作権について
著作権法の観点で最も問題となるのは、「アニメキャラクター」や「アニメキャラクターが着用している衣装」を元に、「アニメキャラクターのコスプレ衣装」を制作することが、著作権と総称される諸権利のうちの複製権(著作権法21条)、翻案権(同法28条)の侵害に該当しないか、という点です(※1)。
前提として、まず「アニメキャラクター」や「アニメキャラクターが着用している衣装」が著作物に該当するか否かが問題となります。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)とされているところ、アイディアたるキャラクターをアニメとして表現した「アニメキャラクター」については通常著作物に該当すると考えられます。他方「アニメキャラクターが着用している衣装」については、ケースバイケースです。例えばありふれた洋服デザイン衣装の場合には、そもそも著作物に該当しない可能性があり、この場合は著作権法上の問題は生じません。
その上で「アニメキャラクターのコスプレ衣装」の制作が、複製権、翻案権侵害になるかについてですが、これは「アニメキャラクター」や「アニメキャラクターが着用している衣装」と、「アニメキャラクターのコスプレ衣装」とが、「本質的な特徴の同一性を維持しつつ」、「これに接する者が既存の著作物(注・本件では「アニメキャラクター」「アニメキャラクターが着用している衣装」のこと)の表現上の本質的な特徴を直接感得する」(※2)といえるか等により判断されると考えられています。
コスプレ衣装を見た人は、何のアニメキャラクターの衣装かわかることが通常と考えられますが、それが「表現の本質的な特徴を直接感得する」とまでいえるは、ケースバイケースです。例えば、アニメキャラクター全体を着ぐるみのような形で、または戦隊ものの衣装全体を再現したコスプレ衣装を制作する場合は、「表現の本質的な特徴を直接感得」するといえる可能性があると考えられます。他方、アニメキャラクターの一部を取り出したコスプレ衣装を制作する場合は、「表現の本質的な特徴を直接感得」するとまではいえないケースもあると考えられます。
なお、著作権法上、一定の場合には、著作権者より許諾を得ることなく、著作物の使用等を行うことが認められていますが(権利制限規定といいます)、設問のケースでは該当しません。
不正競争防止法について
不正競争防止法の観点では、アニメキャラクターが「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されている」(不正競争防止法2条1項1号)又は「他人の著名な商品等表示」(同法2条1項2号)に該当する場合、当該アニメキャラクターを使用したコスプレ衣装を制作し、販売することは不正競争行為に該当する可能性があります。
実際に、著名なキャラクターであるマリオ等のコスプレ衣装を貸与して、カートで公道を走行等できる事業を営む事業者について、当該コスプレ衣装の貸与行為が上記不正競争防止法上の「使用」に該当すると判断された事例(※3)もあります。
まとめ
上記の通り、アニメキャラクターのコスプレ衣装の製作、販売については、著作権法や不正競争防止法上の問題が生じる可能性があるといえます。報道によれば、戦隊モノのコスプレ衣装を販売していた事業者が逮捕されたケースもあるようです。
また、アニメキャラクターのデザインや衣装等のデザインが商標・意匠登録されている場合、商標法・意匠法上の問題が生じる可能性もあります。
いずれにしても、アニメキャラクターのコスプレ衣装の制作や販売に関しては、各種法律に違反しないよう、必要に応じて専門家にご相談いただくことを検討すべきといえます。
※この記事は、2024年4月1日に作成されました。
- ※1:販売の部分は譲渡権(著作権法第26条の2)の問題となりますが、解説では省略します。
※2:最一小判 平成13年6月28日
※3:知財高判令和2年1月29日、知財高中間判令和1年5月30日