債権回収トラブルを防ぐために契約書で盛り込むべき条項を教えて下さい。
あらかじめ契約書に、相手方が約束を履行しない場合を想定した条項等を盛り込んでおくことで、相手方からの任意の支払いがより期待できるようになったり、損失を抑えたりすることができます。
担保をとる
特定の目的財産から相手方の他の債権者に優先して債権を回収できるようにしたり特定の第三者からの弁済を確保したりすること(債権の担保)で、債権回収の可能性を上げることができます。
この債権担保手段の一つが「連帯保証」ですが、個人に根保証(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証)をさせる場合、「極度額」を定めなければ根保証契約は無効となります(民法465条の2)ので、ご注意下さい。連帯保証契約を定める場合、以下の様な条項を盛り込みましょう。
連帯保証人は、金●●万円を限度として、乙と連帯して、本契約から生じる乙の一切の債務を負担するものとする。
遅延損害金を定める
相手方が金銭の支払いを怠った場合には遅延損害金を請求することができます。当事者間で別段の定めの無い限り、この遅延損害金の現在の利率は年3%ですが、より重い遅延損害金を契約書で定めることで、金銭支払の遅延を防止することが期待できます。
この利率について、余りに高い利率は公序良俗に反し無効と判断されるおそれがありますが、国税通則法に定められた国税の延滞税の割合である年14.6%を用いる例が多くみられます。遅延損害金を定める場合、以下のような条項を盛り込みましょう。
乙が代金の支払を怠ったときは、支払期日の翌日から支払い済みまで年14.6%の割合による遅延損害金を甲に支払う。
決算書等の開示を受けられるようにする
取引の相手方の財産に関する情報は、債権回収のために非常に重要です。取引の相手方が会社の場合、会計帳簿等を閲覧することができれば、債権回収の際に有益な情報が広く入手でき、債権回収の可能性を上げることができます。
この点、取引の相手方である会社に提出を求めやすくするため、次のような条項を契約書に盛り込むことが考えられます。
乙の信用状態が悪化するなど甲の債権を保全する必要が生じたときは、甲は、乙に対して、乙の決算書その他の経理書類・帳簿類を開示すべきことを請求することができる。
弁護士費用も請求できるようにする
相手方から任意に代金を支払ってもらえない場合には、訴訟によって債権回収を図ることもあります。この訴訟に要する弁護士費用は、当然に相手方に請求できるものではありません。弁護士費用というコストを考えて債権回収を諦めることのないよう、以下の様な条項を盛り込み、契約書で弁護士費用の賠償義務まで定めておいた方が良いです。
乙は、本契約に違反して甲に損害(合理的な範囲内の弁護士費用を含むがこれに限らない。)を与えたときは、当該損害を賠償する。
まとめ
以上は、債権回収のため契約書に盛り込んだ方が良い条項の一部となります。新規に取引を始める場合、取引基本契約書の作成やリーガルチェックを弁護士に相談・依頼することをご検討頂ければと存じます。
※この記事は、2024年10月17日に作成されました。