離婚の際、「経済力があること」は親権を主張する際、有利な事情になりますか?
私は経営者で、妻との離婚を考えています。今まで子育ては主に妻が行い、自分は主に経営に集中していました。離婚する場合、子供の親権でもめる可能性があるのですが、経済力があることは親権を主張する際、有利な事情になりますでしょうか?
「経済力があること」という事情は、親権者としての適格性を判断するにあたり、プラスに働く事情にはなりますが、これだけでは、親権を取得することは難しいです。
実務では、これまでのお子様の監護養育状況や、今後お子様を監護養育できる状況にあるという事情などが重視されます。
実務では、これまでのお子様の監護養育状況や、今後お子様を監護養育できる状況にあるという事情などが重視されます。
親権の意義
親権とは、未成年者の子どもが一人前の社会人になれるように、子供を監護教育する権利義務と、子どもの財産を維持管理する権利義務の2つをいいます。
子どもを監護教育する権利義務は、具体的に、子供に対して住む場所を指定する権利(民法822条)や、職業につくことを許可する権利(民法823条)などを指します。
子どもの財産を維持管理する権利は、具体的に、親権者が未成年者である子どもの財産の管理し、子どもを代理して法律行為を行うことをいいます(民法824条)。
親権者の適格性の判断要素
親権者の適格性は、次の要素により判断されます。
- 現在までの子どもの養育状況
(夫婦のいずれかが主として監護養育を担当していたのか。なぜそのようになったかなど。) - 今後の養育方針及び養育環境
(今後、どのように監護養育をするのか、どこで養育をするのかな。これには、祖父母や兄弟姉妹等の協力・援助を含む養育の支援態勢等も含みます。) - 一方の当事者が親権者となるのが適当な理由
(愛情の他、それまでの監護養育の状況に問題がなく、今後も同様であろうと考えられること、住居や収入等の面でも子どもとの生活に支障がないことなど) - 他方の当事者が親権者となるのが不適当な理由等
(それまでの監護養育の状況に問題があり、今後も同様であろうと考えられること。特に子供に対して暴力を振るうとか、従前から監護養育に関与しておらず、今後も監護養育をすることができない状況にあることなど) - 子どもの意向、兄弟姉妹など
(子どもが15歳以上である場合、子どもの意見を聴取する必要があります。また、子どもに兄弟姉妹がいる場合、分離しないようにする傾向があります。)
共同親権について
離婚後の共同親権を認める改正民法が、2024年5月17日の参議院本会議で賛成多数により可決・成立しました。改正法は2026年までに施行される見込みです。
共同親権のもとでは、子どもの養育に関する決定権は父母が共同で持つことになります。離婚後に共同親権を選択した場合の親の権利は、以下のようになります。
事項 | 決定権 |
---|---|
重要な事項(受験・転居・パスポートの取得など) | 両親の合意が必要 |
日常の行為(食事・買い物・習い事など) | 単独で決定可能 |
急迫の事情(緊急手術など) | 単独で決定可能 |
共同親権を選択すると両親が協力して子どもの養育に関わる必要があり、重要な決定事項については両親の合意が求められます。
さらに、虐待などがない限り、子どもと別居する親の面会交流の促進が期待されています。また、祖父母との面会交流が行われていない場合、面会の申し立てが可能となる予定です。
まとめ
以上より、現状ですと、経済力があるという事情だけで、子どもの親権を獲得することは難しいです。ただ、今後、共同親権が導入されることにより、親権で争われるケースが少なくなっていくものと思います。
※この記事は、2024年12月23日に作成されました。