導入事例を広報・営業に利用する際の注意点を教えてください。
どのような点に気を付ければよいですか?
<導入事例を広報・営業に利用する際のフロー例>
① 導入事例の掲載イメージが分かる資料を作成
② 承諾書面の作成
③ 取引先への説明と承諾の取得
④ 導入事例公開前の取引先の確認
⑤ 導入事例の公開
目次
導入事例の広報・営業への利用
自社のサービスPRのため、自社のコーポレートサイト、LP、営業資料等に導入事例を掲載したいが、導入事例となる取引先の承諾をどのようにしてとるべきなのか等、進め方に迷う企業は多いのではないでしょうか。本回答では、法的留意点を踏まえた具体的な進め方を解説します。
導入事例を広報・営業に利用する際の留意点
取引先の承諾
法的観点からはもちろんのこと、取引先との信頼関係の維持のためにも、取引先に事前説明の上で書面による承諾を取得し、その後も掲載内容の事前確認・承諾を得てから導入事例を公表するなど丁寧なコミュニケーションを行いましょう。
導入事例を広報・営業に利用する際のフロー例
① 導入事例の掲載イメージが分かる資料を作成
例えば、以下の工夫をするなどして、取引先がイメージしやすい資料を作成しましょう。
- 「自社の運営するコーポレートサイト、LPおよび自社サービスの営業資料に掲載予定です」等、どこに掲載されるのか明確にわかるように記載しましょう
- すでに公開している導入事例がある場合などは、当該事例を資料に掲載するなど、どのように公開されるかのイメージを明確にしましょう。
② 承諾書面の作成
導入事例の公開は取引先の企業情報を公開することになるため、取引先の担当者のみならず社内決裁を取得している必要があります。そのため、承諾書面を作成し電子署名または捺印をいただくことで、取引先において必要な社内決裁を取得していることを確認しましょう。
<承諾書面において承諾いただく事項例>
A 導入事例記載の情報は秘密情報から除外すること
サービス導入契約において、広く守秘義務を課されている場合があるため、承諾書面で、導入事例に関しては当該守秘義務を負わない旨明確化するとトラブルの防止につながります。
B 導入事例において取引先の名称やロゴの利用を承諾すること
一般的に社名や企業ロゴに関しては登録商標になっている場合が多いため、それらを利用するには取引先の承諾が必要です(商標法25条参照)。
C 導入事例の著作権(著作権法27条および28条に規定する権利を含む)等の知的財産権は自社に帰属し、取引先の役職員は導入事例の公開・利用に関して著作者人格権を行使しないこと
取引先の担当者向けインタビューやアンケートを基に導入事例を作成するため、著作権の帰属先が曖昧にならないよう、承諾書面において明確化しておくことが望ましいです。
D (取引先の担当者の氏名等の個人情報を掲載する場合)個人情報の導入事例への掲載/公開の同意
個人情報に関しては、当該個人情報が帰属する本人にも同意いただきましょう。
E 自社において導入事例を掲載する義務は負わないこと
取引先も時間を割くため、状況が変わった場合には導入事例が公開されないまたは掲載しない可能性もあることを、承諾書面にて同意いただいておくと、トラブル防止につながります。
F 取引先が書面(電子メール等電子媒体を含む)にて希望した場合は速やかに導入事例の公開を停止すること
取引先の状況も変わる可能性があるため、事後的に導入事例の公開を停止できる選択肢がある方が、取引先の承諾を得やすくなります。
③ 取引先への説明と承諾の取得
①で作成した資料に基づき取引先へ説明し、②の承諾書面に電子署名または捺印をいただきましょう。
④ 導入事例公開前の取引先の確認
導入事例作成後、公開前に電子メール等で取引先に内容を確認していただき、公開への承諾をいただきましょう。
承諾書面で正式な承諾は得ていますが、導入事例の内容が取引先のイメージしていたものとは異なっていたなどのトラブルを防止するためです。
⑤ 導入事例の公開
まとめ
上記のように、導入事例を広報・営業に利用する際は、法的観点からはもちろんのこと、取引先との信頼関係の維持のためにも、取引先に事前説明の上で書面による承諾を取得し、その後も掲載内容の事前確認・承諾を得てから導入事例を公表するなど、丁寧なコミュニケーションに基づき進めていくことが大切です。
- 文化庁「著作者の権利」(令和5年度著作権テキスト10頁以下)
- 特許庁ウェブサイト「商標権の効力」
※この記事は、2024年1月31日に作成されました。