長年口約束で取引を続けてきた会社とも、契約書を作成すべきでしょうか。
取引基本契約書作成の意義
契約には、基本契約と個別契約の2つがあります。このうち基本契約とは、特定の取引先と継続的に取引が行われる場合に、すべての取引に共通する基本的な事項を定める契約をいいます。継続的な取引では、取引ごとに契約条件を交渉し、合意して取引を行うことは煩雑です。したがって、継続的な取引を迅速・円滑に進めるために、基本契約を締結した方が良いでしょう。基本契約の内容を明らかにした書面が、取引基本契約書といわれるものです。売買契約、下請契約、業務委託契約などで作成されます。
取引基本契約で定める事項
取引基本契約では、個別契約に共通して適用される事項を定めます。たとえば、⑴契約の目的、⑵基本契約の適用範囲、⑶個別契約の成立時期、⑷基本契約と個別契約の優先関係、⑸契約不適合責任、⑹危険負担、⑺契約解除条項、⑻更新拒絶条項などです。
ここで注意すべき点としては、取引基本契約を締結しただけでは、個別契約について契約は成立しないということです。個々の取引は、個別契約を締結してはじめて具体的な契約が成立します。そのため、取引基本契約では、⑶に記載した個別契約の成立時期を定める必要があります。たとえば、「買主が、売主に注文書を発行し、売主が注文請書をFAX送信等したときに、個別契約が成立する」といった内容になります。
個別契約で定める事項
個別契約とは、基本契約とは別に、個々の取引のたびに締結される契約のことです。実務では、2で記載したように、「注文書」「注文請書」という表題で作成されることが多いです。
例えば、売買契約において個別契約で定める事項は、⑴目的物の詳細、⑵目的物の数量、⑶代金、⑷目的物の引渡時期・方法、⑸代金の支払時期、方法などです。
基本契約と個別契約の関係
基本契約と個別契約を定め、両者の内容に矛盾がある場合、どちらが優先されるか、という問題があります。通常、基本契約書又は個別契約書の中で、優先条項を定めるので、それに従って処理することになります。優先関係についての争いが生じることを回避するために、優先条項は必ず設けておくべきです。
どちらを優先させるかについては、それぞれメリット・デメリットがあります。
基本契約を優先させる場合
基本契約を優先させるメリットは、取引全体でのルールの統一性を確保しやすいという点です。基本契約を優先させると決めておけば、個別契約書の作成を現場に任せておいても、いざというときにトラブルを解決しやすくなります。
他方、基本契約を優先させるデメリットは、個別契約において、あえて基本契約と異なる合意をしたいときに、「基本契約優先の原則にかかわらず」当該個別契約の条文が適用されることを明記しなければならず、煩雑であるという点があげられます。
個別契約を優先させる場合
これに対し、個別契約を優先させるメリットは、現場の実情に応じて柔軟に内容を変更できるということで、デメリットは、基本契約が形骸化し、取引全体でのルールの統一性を確保できなくなるということになります。
どちらを優先させるかは、ケースバイケースになってくるので、事前に弁護士に相談されることをお勧めします。
※この記事は、2024年11月7日に作成されました。