従業員の横領が発覚したのですが、刑事告訴すべきでしょうか。
ただ、時間をかけることは証拠の散逸や本人の逃亡などにもつながりますから、横領の疑いが相当に高まれば、まずは本人への確認前に早急に弁護士に相談しましょう。そして弁護士の指示に従いながら、証拠を集めます。
そのうえで、告訴、民事上の損害賠償の検討などになります。
横領の疑念とその確認
会社で横領の疑念が生じた場合、本人を直ちに追及したくなる気持ちは理解できます。が、まずは証拠や事実の確認が先決です。焦って本人を追及すると後日に横領がなかったと発覚した場合に、会社側の姿勢がパワハラなどの問題にされるリスクもありますし、仮に横領が事実でも証拠や取得した財産を隠されたり、逃亡されたりする危険も高まります。
まずは、弁護士に相談の予定を入れつつ、履歴書、身元保証契約書、業務日報、領収記録など、社内で集めることができる資料を集めてください。店舗での横領の場合、期間経過で抹消される前に、防犯動画の記録を保管してください。
弁護士への相談、証拠収集
弁護士事務所に、それまでに集めることができている資料をもって、相談に行かれてください。弁護士から資料を見ての追加の証拠収集のアドバイスなどがあると思います。
場合によっては顧客側へ連絡して、顧客に対する当時の言動を確認する、顧客に渡した資料のコピーの確保をするなど新たな証拠収集が必要なこともあります。
横領は外部からはわかりにくい犯罪のために、証拠が不十分ですと刑事告発が受け付けてもらえないこともあります。できるだけ証拠を集めましょう。
できる限りの証拠を集めたうえで、横領の可能性が相当に高まれば、本人を呼び出して事実を確認することになります。この時は必要に応じて弁護士が立ち会うこともあります。
告訴上の提出
そのうえで、告訴状を弁護士に依頼して作成してもらいます。横領に見える行為でも、実際には背任や詐欺の方が法律構成しやすい場合などもあります。相当に専門的な検討になりますので、こういう知能犯関係の犯罪は、告訴状は弁護士に依頼して作成してもらうべきです。
そして、これを警察署に提出します。
一回で受付になることもありますが、そうでないことも多いです。たいていは、警察では担当者がコピーを取って検討すると言われますので、しばらく待つことになります。時にはこの段階で追加資料を求められることもありますので、可能な限り対応した方がよいでしょう。
金銭の回収について
刑事の問題は告訴が受領されれば警察に任せることになります。しかしこれで損害が回収できるわけではありません。刑事事件の対応の中で、示談を申し入れられることも多いですし、そういう申し入れがあれば、そこで交渉協議することになります。
そういう申し入れがなければ、民事上の損害賠償訴訟をして、金銭回収を図ります。もっとも、犯罪直後であったり不動産を所有しているなど、まとまった財産があるなどの事情がない場合は、回収が困難な場合もあります。民事訴訟には費用もかかりますから、どこまで追求するかは慎重な検討が必要です。
※この記事は、2024年12月4日に作成されました。