雇用契約書で定めるべき内容を教えてください
雇用契約書に定めるべき内容
就業規則の定めがある場合とない場合で、雇用契約書に記載すべき内容は異なります。
就業規則の定めがある場合
「就業規則の定めがある場合」には、①就業規則の一般条項には明示されていない個別的な事項(勤務場所、業務内容など)、②就業規則に定めがあるが、雇用の際に特に念を押しておくべき重要事項、③就業規則の定める雇用条件で契約書の中でも引用等されている内容などがあります。
就業規則の定めがない場合
「就業規則の定めがない場合」には、労働契約の期間、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準、就業場所及び従事すべき業務、始業時刻と終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項、賃金の決定、計算・支払方法、賃金の締切・支払日、昇給、退職に関する事項などを規定すると良いでしょう。
また、形式面として、雇用契約書は、通知書とは異なり契約書ですので、合意の証として、使用者と労働者の双方が、署名又は記名、捺印を行います。
雇用契約書と労働条件通知書との違い
雇用契約書は使用者と労働者の双方の合意の形式によって作成されるものですが、労働条件通知書は当該労働者の労働条件について権限をもつ者が作成し労働者に対し交付されるという、「双方の合意」であるか、それとも「一方(使用者側)からの通知」であるかという点に違いがあります。
また、雇用にあたって、使用者は労働条件を明示する必要がありますが、労働条件通知書をもって明示することが一般的に多く、その意味で、労働条件が記載された労働条件通知書を示すことは法的義務であるともいえます。なお、就業規則を作成している使用者は、労働契約を締結する際に、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を交付すれば、就業規則に定められている事項については労働条件明示義務を履行したものとされています。
これに対して、労働契約書という契約書を作成することまでは、現時点では法律上義務付けられていません。
労働契約書の作成が望ましいこと
企業経営を行い、1人でも労働者を雇用する以上、労働問題のリスクは潜在的なものも含めると避けることは出来ない問題であると思います。また、紛争が生じた場合には、労働者から労働条件について使用者とは異なる認識であるという主張を受けたり、そもそも契約の締結に際し労働条件は示されていないといった主張を受けたりする場合もあるかもしれません。
労働契約法は、第4条1項で「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする」とし、同条2項で「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする」と規定されています。
法律上は、使用者が労働者との間で契約書を作成することまでは義務付けていませんが、予防法務の観点から、労働者が合意した事実(労働条件について理解、納得してもらった事実)を残すためにも、労働者の署名又は記名、捺印が書面上から確認できる形式である労働契約書の作成が望ましいと考えます。
まとめ
労働契約書の作成は法的義務ではありませんが、企業運営を行うにあたってトラブルを事前に防ぐ予防法務の観点からは、労働契約書の作成が望ましいため、きちんと労働契約書を作成するようにしましょう。
※この記事は、2024年12月19日に作成されました。