TOPQ&A記事ファイル共有ソフトを利用したとして、発信者情報開示請求が届きました。どうしたらよいでしょうか?
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ファイル共有ソフトを利用したとして、発信者情報開示請求が届きました。どうしたらよいでしょうか?

ビットトレント(BitTorrent)というファイル共有ソフトを利用したとして、会社で契約しているプロバイダーから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届きました。全く意味がわかりませんがこれはどういうものなのでしょうか。また、これからどうしたらよいのでしょうか?
社長がファイル共有ソフトを利用した覚えがない場合、貴社の従業員や出入り業者が会社の回線を利用してファイル共有ソフトを利用し違法なアップロード行為を行ってしまった可能性があり、調査・対応が必要です。
回答者
笹浪 靖史 弁護士
弁護士法人オリオン法律事務所

ファイル共有ソフトとは

ファイル共有ソフトは、インターネット上で音楽、映画、漫画などの様々な電子ファイルを共有しダウンロードができるソフトウェアです。

有名なファイル共有ソフトは映画にもなった「WINNY」ですが、近時、実務上よく問題になるのは「BitTorrent」(ビットトレント)というソフトウェアです。トレントで作品をダウンロードすると、ダウンロード完了後、あるいは状況次第ではダウンロードと同時に、作品を他者に送信してしまいます。そうして多数の人が作品を送受信し、多数の人が作品をダウンロードできるようにするという仕組みです。大変便利な仕組みですが、トレントでは市販の作品が著作権を侵害する形で流通しています。

トレント系のソフトウェアは多数あり、中にはブラウザーで動作するものもあります。トレントは10年以上前から大変多く利用されており近時は減少傾向にありますが、一時は10万人以上のユーザーがいたといわれています。少しパソコンに詳しいくらいの方でも利用できますから、現在でも利用している方が沢山おられます。

会社にトレント問題で発信者情報開示請求が届くケース?

平成30年ころから、一部の著作権者がトレントの一般ユーザーに対し損害賠償請求を行う事例が多発してきました。著作権者はまずトレント利用者の氏名住所を特定するため、プロバイダーに対し発信者情報開示請求を行います。プロバイダーは該当の契約者に対し氏名住所を開示することに同意するか否かを確認する書面(意見照会書)を送ります。今回会社に届いたのはこの書面だと思われます。意見照会書はプロバイダーの回線契約者に送付されますので、会社の社用パソコンでトレントが利用されてしまった場合、この書面がプロバイダー契約者である会社宛てに届くことになります。回答期限(通常1~2週間)もある中、会社としては突如として降って湧いた本問題に対する対応方針を考える必要に迫られてしまいます。

望ましい会社の対応

まず、届いた発信者情報開示請求の書類に記載の違法行為が問題となる時期(発信者情報開示請求の書類にタイムスタンプ等として記載された時期)に、会社が契約する回線を誰が利用したか、し得たかを確認します。そして、対象従業員のPCにファイル共有ソフトがインストールされていないか調査し、必要に応じ利用した可能性の高い人物を聴取する等して、会社で実際にファイル共有ソフトが利用された可能性があるのかを、できる限り調査しなければなりません。

利用者が判明した場合ですと、通常の場合、法的な責任の主体は当該利用者個人となると考えられますので、会社は問題の当事者ではないということになります。同人の了承を得た後、意見照会書に同人の氏名住所を記載し経緯を簡易に記載して返送すれば、後は同人と著作権者との間の問題となってゆくと考えられます。

逆に利用者が判明しなかった場合は、難しい問題があります。まず、事案によりますが、そもそも著作権者側が行ったトレント利用者の特定の作業が正しいのかが多くの場合明らかではないケースがあります。また、仮に著作権者側の特定が正しかったとして、会社関係者にトレント利用者がいたと判明していないのに、会社に責任が生ずるものかという問題もあります。さらに、仮に責任が生ずるとしていくらの賠償をすればよいのかという問題もあります。加えて、これが一番大きな問題なのですが、一般にトレントユーザーは数百から数千のファイルをダウンロードしているため、今回問題となる作品以外にも過去に多数の著作権侵害が生じており、今後他の請求も届くのではないかという問題があります。これらの問題があることを想定し、会社として今後の方針を決定する必要があります。

トレント問題は未だ法的に解明されていない点が残る難しい問題です

トレント問題は現在、音楽作品、漫画作品、成人向けアダルト動画について著作権侵害が問題とされるケースが多いのですが、トレントユーザーの利用形態は様々であり、問題の形態は一律ではありません。損害賠償額については小職が過去に行った裁判では1作品当たり高くとも5万円程度とされた例がありますが、個別の利用形態や対象著作物により損害額は変動しますし、未だ法的に未解明な点も残っており、裁判所の考え方も現時点では定まったとはいえません。個別具体的なトレントの利用状況や著作権者側の調査状況・証拠状況によっても侵害の成否および損害額計算が左右されるでしょう。

トレント問題で特に難しいのは、著作権侵害の問題が一つの作品に限定されないという点です。多い方は「多数の」著作権者から「数百数千の作品」について各々著作権侵害が問われ得て、一件一件が少額であったとしても合計では到底支払が出来ない多額の賠償責任を負うことになってもおかしくないのです。そうした責任をトレントユーザー10万人が負うこととなりますと、トレント問題は日本社会において10万人(家族も含めれば数十万人)の今後の生活や人生が左右されかねない社会問題にもなり得る大問題と言えます。

トレント問題については専門性が高く法的に難しい点があるため、詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

この記事は、2023年11月28日に作成されました。

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