TOPQ&A記事フランチャイズ加盟店から営業時間短縮を求められた際の対応を知りたいです。
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フランチャイズ加盟店から営業時間短縮を求められた際の対応を知りたいです。

フランチャイズ加盟者からの店舗の営業時間の短縮を求められた場合、フランチャイズ本部としてはどのように対応すればよいですか?
フランチャイズ契約書に店舗の営業時間が明記されている場合は、原則として双方の合意が無ければ店舗の営業時間は変更できません。ただし、本部が、正当な理由なく加盟者からの協議を一方的に拒絶して従前の営業時間を受け入れさせた場合、そのことが優越的地位の濫用になる可能性があるので注意が必要です。
回答者
神田 孝 弁護士
弁護士法人心斎橋パートナーズ

チェーンイメージと店舗の営業時間

店舗の経営者は加盟者なので、店舗の営業時間も基本的には加盟者が定めることになります。しかし、コンビニエンス・ストアやファストフード店など、一定の営業時間が重要なチェーンイメージになっている場合は、加盟者の店舗でもその営業時間を確保してもらう必要があります。そうした場合、フランチャイズ契約書に店舗の営業時間が具体的に定められます。

ですから、フランチャイズ契約書に店舗の営業時間が定められている場合は、加盟希望者としては契約書に書かれた営業時間を遵守しなければなりません。本部が加盟者からの店舗の営業時間の短縮を求められたとしても、双方の合意によってフランチャイズ契約書が変更されない限り、原則として店舗の営業時間は変更されません。

コンビニエンス・ストアの24時間営業

多くのコンビニエンス・ストアでは24時間営業がとられており、フランチャイズ契約書において加盟者に24時間営業を義務付ける例が一般的です。しかし、24時間営業は人件費や防犯に関して加盟者に多くの負担を課すことから、これを加盟者に義務付けることが優越的地位の濫用にあたらないかが問題となりました。

この点、東京地方裁判所は、加盟者は本件深夜営業の義務が定められた本件基本契約等を締結した上でフランチャイズ・チェーンに加盟したのであるから、深夜営業を行う義務を負うことは明らかであり、24時間営業が実施されないとチェーンイメージが損なわれると判断しました。そのため、本部が加盟者に対して深夜営業を行うことを求めることは、優越的地位の濫用に当たらないとされました(東京地判平成23年12月22日判タ1377・221)。

公正取引委員会による「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」の改正

加盟者募集の際の注意点

前掲東京地裁の判決後、人手不足・人件費の高騰がさらに深刻になりました(最近の公正取引委員会の調査によると、77.1%のコンビニ加盟者が深夜時間帯は赤字であると答えています。)。

そのため、公正取引委員会は、令和3年4月の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」の改正において、本部が加盟希望者に対して店舗の営業時間を説明する際の注意点を追加しました。

加盟者募集に際して、本部が営業時間や臨時休業に関する説明をするに当たり、募集する事業において特定の時間帯の人手不足、人件費高騰等が生じているような場合等その時点で明らかになっている経営に悪影響を与える情報については、加盟希望者に当該情報を提示することが望ましく、例えば、人手不足に関する情報を提示する場合には、類似した環境にある既存店舗における求人状況や加盟者オーナーの勤務状況を示すなど、実態に即した根拠ある事実を示す必要がある。(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」2(2)ウ)。

フランチャイズ契約締結後の注意点

店舗の営業時間は店舗が入る施設の状況によっても左右されるので(例えば、ショッピングセンターでは施設全体の営業時間が制限されています。)、フランチャイズ契約でも、当事者の協議により営業時間の変更が可能であると書かれる例があります。

このように、当事者の協議により営業時間の変更が可能であると、フランチャイズ契約書に書かれている場合の営業時間の変更について、公正取引委員会は、以下のように注意点を説明しています。

「本部が、加盟者に対し、契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず、24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し、正当な理由なく協議を一方的に拒絶し、協議しないまま、従前の営業時間を受け入れさせること。」は、優越的地位の濫用にあたる場合がある(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」3(1))。

 

このように、営業時間の変更協議を許容する契約文言であるにも関わらず、本部が、加盟者からの営業時間短縮の協議を正当な理由なく一方的に拒絶して、従前の営業時間を受け入れさせようとした場合は、優越的地位の濫用に当たる可能性があります。ここで言う「正当な理由」の有無は、チェーンイメージの重要性や店舗をとりまく経済環境、本部と加盟者の関係など様々な事情から判断することになるでしょう。

コンビニ・フランチャイズにおける時短営業の現状

現在、コンビニ本部各社では加盟者による時短営業を許容する方針を取っています。2022年時点では、大手コンビニ各社で時短営業を採用している店舗数は3~5%とされています(2022年7月16日付日経MJ)。

この記事は、2023年12月27日に作成されました。

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