経営者保証ガイドラインで破産免除になるのはどのような場合ですか?
救済措置として「経営者保証ガイドライン」というものがあると聞いたのですが、どのような場合に破産免除になるのでしょうか。
経営者保証ガイドライン
経営者保証ガイドラインとは、中小企業の経営者の個人保証を債務整理するための手続を定めたものです。
経営者が自己破産することなく、保証債務を整理することができ、一定の資産を残すことができるほか、信用情報登録機関に登録されない等のメリットがあります。
弁済について誠実・財産状況等の適時適切な開示
経営者保証ガイドラインを利用するためにはいくつかの要件があり、その中の一つとして、主債務者(会社)と保証人(経営者)の双方が弁済について誠実であり、債権者の求めに応じて財産状況等を適時適切に開示していることが必要となります。
経営者の保証債務の整理に着手する段階で、既に弁済が滞っているケースが多いと思われますが、債務不履行があることだけで弁済についての誠実性を欠くと評価されるわけではありません。
また、破産状態に陥っている中小企業では、粉飾決算がなされていることも実態として少なくありませんが、債務整理着手前に粉飾がなされていたからといって、直ちに財産状況等の適時適切な開示がなされていないと評価されてしまうわけではありません。粉飾による融資金詐欺が疑われたり、大規模な粉飾を行って経営者が私腹を肥やしていたりしたというような悪質性の高いケースでなければ、経営者保証ガイドラインの利用が許容される余地があります。したがって、粉飾決算が行われていた場合には、その事実を隠すのではなく、その具体的な内容や、経緯・動機等について、丁寧に債権者に説明を行い、理解を求めることが重要です。
経済合理性
経営者保証ガイドラインを利用するために必要な経済合理性とは、債権者の回収見込額が破産手続と比べた場合にそれを下回らないことを意味します。
具体的には、①現時点で清算した場合の主債務及び保証債務の回収見込額の合計と、②将来時点における主債務及び保証債務の回収見込額の合計とを比較し、①が②を上回っていれば経済合理性が認められます。
また、①②いずれもゼロ(つまり、現時点でも将来時点でも回収見込額がゼロ)の場合には、保証人による弁済額が0円といういわゆるゼロ弁済も、破産手続による回収見込額を「下回っていない」という点において経済合理性が認められる場合があります。
免責不許可事由
債務の返済義務を免除されることを免責といいますが、破産法上、一定の事由(財産の隠匿、偏頗弁済、浪費・賭博、帳簿の隠滅・偽造、裁判所に対する虚偽の説明等)が存在する場合には免責を受けることができません(免責不許可事由)。
もっとも、債務整理着手前の行為に関しては、破産法において裁量免責(免責不許可事由が存在する場合でも、諸般の事情を考慮し、裁判所が裁量的に免責を許可すること)が認められていること等に照らし、ある程度柔軟な対応が可能とされています。
他方、債務整理着手後に免責不許可事由に該当する行為を行ってしまった場合には、経営者保証ガイドラインの利用ができなくなってしまうおそれがあるため、注意が必要です。
まとめ
経営する会社が倒産すると経営者個人も破産せざるを得ないと考える経営者の方は多くいらっしゃるかと思います。
しかし、経営者保証ガイドラインによる保証債務の整理を行うことにより、経営者個人については破産することなく、また、破産手続において手元に残すことができる自由財産以上の資産を手元に残すことができる可能性があります。
※この記事は、2024年11月29日に作成されました。