自社製品の模倣品を見つけた場合の対応を教えてください。
はじめに
Tシャツのデザイン画等や形態を意匠登録していれば、意匠権侵害を理由に模倣品の販売差止め等を求めることが考えられます。意匠登録をしていなくても、デザイン画等については、著作権侵害を理由に、同様の対応を検討可能です。
意匠登録がなく、かつTシャツの形態を模倣された場合、不正競争防止法所定の形態模倣行為に該当するか否かを検討することになります。今回は、形態模倣行為について解説していきます。
形態模倣行為の法的な取り扱い
形態模倣行為に該当すると、販売差止め等の対応が可能です。本件では、他者が貴社商品の形態を模倣したといえるか否かを中心に検討することになります。なお、形態といっても、商品の機能を確保するために不可欠なものやありふれたものは保護されません。
形態を模倣したといえるためには、①他人の商品の形態に依拠して、②これと実質的に同一の形態を作り出すことが必要です。実質的に同一というのは、いわゆるデッドコピーなどをいい、単に類似するだけでは足りません。この意味では、意匠権や著作権が、類似で足りるとされていることに比べて、保護のハードルが高いといえます。上記②が認められた場合には、特段の反証がない限り、上記①が認められるとした裁判例があります(大阪地裁平成10年8月27日判決・平成8年(ワ)第4693号)。
実際の対応時のポイント
Tシャツについて形態模倣行為に該当するとした裁判例(大阪地裁平成29年1月19日判決・平成27年(ワ)第9648号・同第10930号)があります。この裁判例は、長袖と半袖の違いやロゴの有無などの多数の相違点があるものの、①商品全体に黒色と白色の横縞が繰り返されているだけでなく、各横縞部分の特徴的な繰り返しパターンがほぼ同様に施されている点、②前身頃に類似するデザインの大きなりんごの柄がほぼ同じ手法で施されている点、③そのりんご部分を縁取りするようにラインストーンが同じパターンで配されている点で形態が共通しており、これらの特徴的部分で正面視した形態及び両商品を背面視した形態がほぼ同一であるから、両商品は商品全体の形態が酷似し、その形態が実質的に同一であると判断しました。
上記の裁判例はあくまで一例ですが、参考にするとよいでしょう。
ところで、模倣品の流通が輸出入を伴う場合、税関での輸出入の差止申立も有効な手段です。差止めが認められれば、模倣品の流通を水際で阻止できます。
まとめ
模倣品については、意匠権、著作権又は不正競争防止法による対応があり得ることを解説しました。また、輸出入が絡む場合は、税関での差止手続も検討するとよいでしょう。
※この記事は、2025年1月27日に作成されました。