ハラスメントの予防策を具体的に教えてください。
そこで弊社でも、ハラスメントが発生しないように何か対策をしたいです。何をすればよいか、具体的に教えてください。
目次
トップや経営陣のハラスメントに対する意識改革
企業として「職場のハラスメントはなくすべきものである」という方針を、トップのメッセージの形で明確に打ち出すことが必要です。この際、ハラスメントを防止することの必要性について、ハラスメントが人格や尊厳を傷つけ、従業員の勤労意欲の低下や企業のレピュテーションの毀損を招くなどの、企業に与える影響などにも触れながら伝えることが重要です。
このようなトップとしての宣言は一度だけにとどまることなく、従業員の意識に根付かせるために定期的に発信するようにします。また、経営会議等の経営陣が出席する会議やコンプライアンス会議等で、ハラスメント事案を報告する体制をとるなど、トップとしてハラスメント対策に積極的に取り組んでいくことも必要です。
従業員に対する周知徹底
社内方針の周知
職場のハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む全ての従業員に周知・啓発することが必要です。
例えば、社内報やパンフレット、社内ホームページ等の広報に、ハラスメントの内容(どのようなものがハラスメントになるか)やハラスメントの発生の原因や背景、ハラスメントはあってはならない旨の方針を記載し、配布します。
なお、社内報やパンフレットは、実際に従業員に読んでもらうことが大切です。そのため以下のような工夫をして、有効に機能するように配慮します。
①コピー機のすぐそばや休憩スペースなど、従業員が1人で過ごすことが多く、従業員の目に付きやすい場所に掲示する
②社内ホームページの該当ページへのアクセスログを取り、該当ページにアクセスしていない従業員については、上司から直接注意する
また、周知徹底するための時期としては、新入社員の入社時期、異動の多い時期に合わせて、繰り返しアナウンスをする等の工夫も考えられます。
社内研修、セミナーによる啓発
ハラスメントに関する研修を実施するなどして、従業員に対して啓発活動をすることも大切です。
ハラスメントの予防に向けて実施した取組のうち、一番効果を実感できるのは研修であるとも言われており、可能限り、対象者全員に受講させることが望ましいといえます。そのため、異動後に管理職になる従業員や新入社員など漏れなく全員が受講できるよう、開催時期を4月や異動後に設定するなどの工夫をするべきでしょう。
また、研修も、一度行えばいいというものではなく、定期的に繰り返して実施することにより、より高い効果を期待できます。
就業規則の整備
職場のハラスメント防止を従業員に周知する方法として、就業規則などの服務規律を定めた文書において、ハラスメントの内容やハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、その規定と併せて、ハラスメントの発生の原因や背景となり得ることを、労働者に周知・啓発することも考えられます。
この場合、必ずしも就業規則によることなく、ハラスメント規則などその他の職場における服務規律等を定めた文書を作成することも可能です。ただし、就業規則にハラスメント規則への委任規定を設けることを失念しないように注意しましょう。
また、就業規則も従業員に実際に読んでもらえるよう工夫すべきです。
相談窓口の設置
相談窓口の整備
従業員がハラスメントを受けた場合に、従業員が相談できる「相談窓口」をあらかじめ設置する必要があります。ハラスメントのみに関する相談窓口を独立で設置する必要はなく、他の違法行為や不正行為の内部告発等をも相談対象とする相談窓口を設置するのが一般的でしょう。
相談窓口の設置は、今や常識的なハラスメントの防止措置となっています。また、企業が自社にハラスメントがあったことを認識する契機として、相談窓口によるものが半数以上になっているという報告もあり、積極的に相談窓口を設置し、有効に運営すべきといえます。
相談窓口の効果的な運営
担当者の属性
どの年齢層、どの役職の従業員からハラスメントの相談があるか、あらかじめ想定することは困難です。ハラスメントが起きた場合に、被害者の従業員が「何もしなかった」ということがないように、企業は相談しやすい環境を整えておくことが必要になります。
そこで、企業内の相談窓口の担当者は、なるべく幅広い年齢層と役職で複数名を配置することが理想といえます。また、相談窓口には男女両方の担当者を設置しておくことが望ましいでしょう。
企業外部の相談窓口
相談窓口は、企業内部と企業外部とに設置することが考えられます。
ハラスメントを受けた従業員が相談しやすい環境を整えるべく、企業から独立した立場として、企業外部に相談窓口を設置している企業も多くあります。この場合の企業外部の相談窓口の担当者は、顧問弁護士ではない方が望ましいでしょう。
広く相談を受け付けること~相談方法や相談内容の工夫~
ハラスメントを受けた従業員が相談しやすい環境を作るために、相談方法の間口を広げるべく、相談は面談だけでなく、電話、メール等複数の方法で受けられるように工夫すべきです。
その他、そもそも相談窓口が設置されていることを、社内報やパンフレット、社内ホームページ等の広報に掲載、配布するなどして、従業員へ周知徹底しましょう。それと共に、相談により不利益が生じないこと、プライバシーは守られること等も合わせて案内することが必要です。
※この記事は、2024年1月12日に作成されました。