TOPQ&A記事現場社員のパワハラに対する意識を改善させたいです。
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現場社員のパワハラに対する意識を改善させたいです。

当社では目標未達の社員に対して上司が厳しく叱咤する行為が、長年企業文化として黙認されているのですが、最近インターネットの転職サイト上で「当社はパワハラの文化がある」、という口コミが出ていることに気づきました。大きな問題になる前に、今後社内のコンプライアンスへの改善をしていきたいのですが、何から着手すべきでしょうか。
「意識の改善」というと、つい、よくあるハラスメント研修や、ハラスメントをした者に対する厳罰などの対応にまず走りがちですが、そうではなく、経営トップによりハラスメントを許容しない方針を明確化してもらうことを最優先にすべきです。
そうしないと、結局は大きな問題の発生を防げないことになります。
回答者
郷原 信郎 弁護士
郷原総合コンプライアンス法律事務所

企業文化、組織風土に原因があるコンプライアンス問題への対応(一般論)

パワハラに限らず、コンプライアンス問題があると、つい、当事者の“コンプライアンス意識”を問題にし、意識改革ばかりに対策が集中しがちです。

しかし、長年の企業文化、組織風土などがコンプライアンス問題の原因となっている場合、個々人の意識を一時的に高めたとしても、その組織的な原因を取り除かなければ、いずれ問題が発生するリスクが高まることになります。

具体的な対応について

パワハラを容認する企業文化、組織風土を持つ会社の特徴

パワハラが多い職場には例えば「体育会のノリ」とか「地域性」とか、様々な原因があり得ます。

しかし、それが長年の企業文化、組織風土にまでなるには、もっと組織の側に原因があるはずで、おそらく「目標未達の社員に対して上司が厳しく叱咤する行為が、長年企業文化として黙認されている」ような会社では、そうしたパワハラをする上司は、厳しい叱責により目標を達成しており、会社から営業的に評価されているためパワハラが黙認されている、ということなのだろうと思います。そもそも経営陣が厳しいノルマの必達を求め、こうした上司に対してパワハラ的な言動をしている、という可能性も高いです。

残念ながら、こうした状況はまだまだ少なくない会社で見受けられます。

組織的な原因への対応を優先する必要性

このような会社で、いくら研修で「パワハラはしてはいけません」と言ってパワハラの定義や事例を教え、また、厳しい処分を下すようなルールを設けたとしても、多少パワハラをする人が減る程度で、会社から評価され続ける以上はやる人はやり続けるでしょうし、やらない人や止めた人も、いずれノルマのプレッシャーなどで、つい厳しい叱責をしてしまうかもしれません。

「意識」を変えても、「組織」が変わらなければ、結局のところ問題は防げないのです。

経営トップによる方針の明確化

では、こうした会社でどのように企業文化、組織風土を変えるかといえば、やはり経営陣、特に経営トップに、これまでと違うことを明確にしてもらうより他ありません。ハラスメントを許容しない方針を明確化してもらい、ハラスメントを無くすことに明確にコミットしてもらうことで、初めてハラスメントを容認する企業文化、組織風土を取り除くことができるようになります。

こうした対応をしたうえで、ハラスメント研修を行い、ハラスメント規定を改定すれば、それは十分な効果を発揮することになるでしょう。

さいごに

なお、コンプライアンス部門が経営トップを動かすのは大変、という会社も多いかも知れませんが、今はハラスメントで社長の首が簡単に飛び、ハラスメントの発覚で会社の評価が簡単に下がる時代です。

転職サイトの口コミをきっかっけに、ハラスメントの対外的リスクの大きさについて正しく認識され、真剣に会社を変えようとされているようですので、そうしたご自身のリスク認識や、実際に同業他社で起きている事例などを伝えるなどして、経営陣にもリスク認識を強く持ってもらい、経営陣の認識、そして企業文化を変えていってもらえればと思います。

 

この記事は、2024年5月16日に作成されました。

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