社員に企業の重要情報を共有する際、漏洩の防止をしたいです。
目次
情報漏洩の現状
情報漏洩というと外部からのサイバー攻撃をイメージする方が多いかもしれませんが、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査によると、企業における情報漏洩は、従業員・役員を通じたものが8割を超えています。そして、その約4割が中途退職者によるものであり、転職・独立など人材の流動化が進む中で、従業員・役員(とくに退職者)を通じた情報漏洩に対する対策の重要性が高まっていると言えます。
重要情報の法的な取り扱い
企業の保有する重要情報が不正に取得・使用・開示されてしまった場合、当該侵害行為が、不正競争防止法(以下「不競法」といいます。)が定める営業秘密侵害行為類型(不競法2条1項4号~10号)に該当するときは、被侵害者は以下の救済を受けることができます。
- 差止請求(不競法3条)
- 損害賠償請求(不競法4条)
- 信用回復措置(不競法14条)
ただし、不正競争防止法による救済を受けるためには、不正に取得された情報が「営業秘密」の要件(①秘密管理性、②有用性、③公知性。不競法2条6項)を満たす必要があります。実務上は秘密管理性(①)を満たすように日ごろから重要情報を秘密情報として管理しておくことが肝要です。
重要情報の管理のポイント
効果的な漏洩防止管理のポイントは、①物理的・技術的な防御、②心理的な抑止、③働きやすい環境の整備の3つの観点に分けられます。
物理的・技術的な防御
接近の制御
重要情報へのアクセスを制限し、「知るべき者だけが知っている」という状態を実現することが重要です。
持ち出しの困難化
従業員の不正な持ち出しを防止するために、私物の記録媒体の持ち込みを制限するとともに、会議資料等は会議後に回収するなどアクセス権のある従業員であっても個人で資料を保有させないことや複製させないことなどの対策が考えられます。
心理的な抑止
秘密情報に対する認識向上
入社時・退職時やプロジェクト開始時等にも秘密保持契約を締結することが重要です。また、企業の重要情報に接する立場にある者については、退職後の競業避止義務契約を締結することも有効です。
視認性の確保
退職申出前後のメールやPCのログを集中的にチェックしたり、退職後も転職先の商品情報をチェックしたりすることで重要情報が利用されていないかをモニタリングすることも重要です。
働きやすい環境の整備
働きやすい環境や公平な人事評価制度を整備し、従業員の企業への愛着を高めておけば、貴重な人材を失わずに済み、結果として情報漏洩リスクを低減させることにもつながります。
まとめ
企業の重要情報の漏洩を防止するためには、上記のような対策が考えられますが、現場の従業員は業務効率に反する対策には抵抗感を示しがちです。したがって、経営者自らが情報漏洩対策の重要性を認識し、リーダーシップを発揮して対策を進める必要があります。
※この記事は、2024年8月8日に作成されました。