父の遺産分割協議書を兄が作成したのですが、内容に納得いかない点があります。
現時点では情報不足
まず、現在提案されている遺産分割協議というのは、あなたが1000万円、残りをお兄さんが取得するという内容ですが、残りの相続財産がどの程度存在するか、現時点では情報不足ですので、的確に判断することができません。例えば、お父様の相続財産が2000万円であれば、兄弟で公平な分配になりますが、他方、2000万円より多ければ、あなたが損をすることになります。一般的に、商店を長年経営されてきた方の遺産が、総額で2000万円を大きく超えるということは珍しくありませんし、自宅や店舗の不動産が遺産に含まれる場合には、その評価も必要になってきます。
このような状況で、安易に遺産分割協議にサインすることは危険です。後から、多額の遺産があったことが判明しても、一度行った遺産分割協議の合意を覆すというのは、例外的な事情がない限り、原則、不可能であると考えておかなければなりません。
もしかすると、「とはいえ、実の兄が、人をだますような真似をするはずがない」という風に考えられるかも知れません。しかしながら、人間というのはお金が絡むと豹変しますし、本性が現れます。親族だからといって安心することはできませんし、むしろ親族だからこそ危険であるとも言えます。
どのように進めていくべきか
では、どのようにお父様の相続手続を進めていくのがよいかというと、まずは、お父様の相続財産としてどのようなものがあり、その金銭的な価値がいくらであるか、正確に把握する必要があります。まずはこの部分の調査を行わないと、分割協議を行う前提が定まりません。
一般的な相続財産としては、現金、預貯金、積立型の保険、土地建物などの不動産、株式、投資信託等の有価証券、自動車、高額な動産(骨董品、宝石など)が考えられます。これらについては、一定の調査方法があります。また、財産の調査を行う過程で、他の財産が発見されることもあります。これらの調査をご自身で行うことは相当の負担がありますので、弁護士に依頼して調査を行うことで、そうした手間を省くことができます。
その上で、調査結果に基づき、法的に適正妥当な遺産分割の内容を検討の上、相手方であるお兄さんに提案し、まずは裁判外の話し合いによる交渉を進めていきます。この話し合いで双方合意に至った場合には、遺産分割協議書を作成します。
話し合いで合意ができない場合には、裁判所に遺産分割の調停を申立て、裁判所を介してさらに話し合いを続けることが考えられます。その場合、中立な第三者の視点から、遺産分割の方法について解決案が出されることも多く、裁判外の話し合いでは解決できなかった事例も、調停で解決することがほとんどです。
まとめ
このように、遺産分割協議を行うにあたっては、十分な財産調査と法的な観点からの検討を行い、適正妥当な着地点を探る必要があります。その上で、相手方と交渉を行い、場合によっては裁判所を介した手続を行う必要があります。これらの手続をスムーズに行い、適正な解決を得るためには、やはり早期に弁護士に相談の上、遺産分割に関する手続を依頼されることが最善かと思われます。
※この記事は、2024年11月23日に作成されました。