飲食店でドタキャンされました。
キャンセルポリシーを設定しており、それに対する予約客者の同意がある場合には、キャンセルポリシーに基づく違約金の請求をすることが考えられます。
仮にキャンセルポリシーがない場合であっても、予約客に対し、債務不履行又または不法行為に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。
はじめに~ドタキャンの社会的背景~
予約のドタキャンまたはノーショー(予約客が連絡なく現れないこと)は、飲食店だけでなく、美容院、ホテル、エステ、貸しスペース、イベント等々、予約制の店舗では発生しうる事態です。
2018年11月1日付で経済産業省が公開をした(ただし、現在は公開されていない)「No Show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によると、ノーショーによる飲食業界の1年間の損失は2,000億円にも及ぶとされており、全ての業界を考えた場合の損失は巨大なものになることが予想されます。
しかしながら、ネット予約が普及したことにより予約の難易度が下がり、その結果ドタキャンやノーショーの発生頻度も高くなる傾向にあると思われます。
ドタキャンの法的な取り扱い
予約の際に、店舗が定めるキャンセルポリシーへの同意が存在する場合、キャンセルポリシーの内容は予約客と店舗の間における契約内容となります。通常、キャンセルポリシーの表記は損害賠償の額の予定または違約金の規定であると考えられることから、契約に基づく損害賠償または違約金の請求として、キャンセルポリシー記載の金額を請求することになります。
もっとも、顧客が消費者である場合、店舗と顧客の間の契約には消費者契約法第9条1項が適用され「平均的な損害を超える」部分については無効となってしまいます。
また、予約を入れた上で、何らの連絡もなく店舗に行かなかった場合、その予約客の行為は、店舗との間において、債務不履行または不法行為として損害賠償の対象となります。
店舗に対し、事前にキャンセルの連絡をした場合であっても、当該キャンセルによって店舗に「損害」が発生したのであれば、店舗は予約客に対し、債務不履行または不法行為として損害の賠償を求めることが可能となります。
実際の対応時のポイント
ドタキャンやノーショーに基づく損害賠償請求をする場合、正確な「損害」を立証することが難しいという特殊性があります。そのため、予約客に対してスムーズに請求を行おうとする場合には、キャンセルポリシーが設定されており、かつ、予約客がキャンセルポリシーに同意をしていることが重要となります。
なお、キャンセルポリシーがある場合でも「平均的な損害」を超える規定は無効となってしまいます。そのため「予約金額の120%」というようなキャンセルポリシーを設定したとしても「平均的な損害」を超える部分は無効となってしまいますのでご注意ください。
キャンセルポリシーが存在しない場合や同意の有無が判然としない場合にも損害賠償の請求は可能ですが、具体的な損害を立証する必要があります。
なお、体感になりますが、悪意でのドタキャンまたはノーショーの比率は高いものではなく、単に忘れていたというような事案も多いことから、予約客に対する定期的なリマインドを行うことにより、ドタキャンやノーショーの発生頻度を下げることが可能です。
まとめ
ドタキャンやノーショーが発生してしまった場合には、キャンセルポリシーが設定されていればそれに従った請求を、キャンセルポリシーがない場合でも損害賠償請求を行うことが可能です。
もっとも、キャンセル料金はどうしても少額になりやすいことから、手間をかけての回収が難しい側面もあります。そのため、定期的にリマインドを行う、予め決済情報を入手するなどの対応策も検討に値します。
なお、私は飲食店や美容院、ホテル向けにキャンセル料金の回収サービスを提供しておりますので、ご興味がある方はご利用ください。
※この記事は、2023年10月18日に作成されました。