意匠権を取得するにはどのような手続きが必要でしょうか?
なお、出願前に意匠を公開してしまうと、自ら創作したものであっても、原則として新規性を失ってしまうので注意が必要です。
意匠とは?
意匠とは、①物品の形状、模様、色彩やこれらの結合、②建築物の形状等、③画像であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいいます。
製品の技術については特許権、製品の名称などについては商標権を取得することで保護を図ることができますが、製品のデザインを保護するのが意匠権です。
製品の技術が成熟した分野においては、製品のデザインが重要となり、そうでなくても、魅力的・個性的な意匠は、製品の性能と同様に極めて重要な要素の一つです。
意匠権の有用性
意匠権を取得することには、どのような有用性があるのでしょうか。まず、①他者による模倣品の排除をすることができ、同時に、他者に対する牽制効果を得ることもできます。②製品の見た目で模倣の有無を判別することが比較的容易ですので、特許発明と比べても、模倣品を調査・発見しやすいというメリットがあります。また、③他者に意匠権を侵害されてしまった場合でも、製造・販売の差止めや損害賠償を請求することができます。
④意匠登録出願は、後述するように、特許出願と比べて必要な書類が少なく簡潔です。
更に、⑤魅力的、個性的な意匠は、市場において消費者を引き付け、製品ブランドを確立することができ、また、⑥意匠権を取得することで、ビジネス上の信用を得て、資金調達につながるというメリットもあります。
意匠権を取得するための手続きと注意点
意匠権を取得するためには、特許庁に「願書」と「図面」を提出して意匠登録出願をする必要があります。
特許庁では意匠登録のための審査がなされます。具体的には、以下の登録要件などが審査されます。
② 世界で最も新しい意匠であること(新規性)
③ 容易に創作できた意匠ではないこと(創作非容易性)
④ 他者より先に出願していること(先願)
⑤ 先願意匠の一部と同一又は類似の意匠ではないこと
⑥ 公序良俗に違反する意匠ではないなどの不登録事由に該当しないこと
審査の結果、登録査定を得られれば、登録料を納めることで、意匠権を取得することができます。
意匠権を取得する際の注意点
日本で取得した意匠権が及ぶ範囲は、日本国内に限定されます(属地主義)。したがって、外国でも意匠を独占的に実施したい場合には、その国においても、その意匠について意匠権等を取得する必要があります。
また、意匠出願前に意匠を公開してしまうと、その意匠が自ら創作したものであっても、原則として新規性がないと判断されるので、意匠を公開する前に意匠登録出願をする必要があります。ただし、一定の要件の下、意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きがあります。
意匠登録出願には専門的な知識が必要ですので、弁理士や知的財産権を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
意匠権を取得し、活用することで、模倣品を排除しつつ、魅力的・個性的なデザインの製品を保護し、ビジネス上の地位を優位にすることができます。この記事をきっかけに、意匠権の取得を検討されては如何でしょうか。
意匠登録出願に関する詳しい情報は、特許庁のホームページなどでご確認ください。
※この記事は、2024年3月26日に作成されました。