亡くなった従業員の親族から未払い残業代を請求されました。どうすればよいですか?
当社が把握できている分の残業代は、故人に対しすでに支払っているはずです。どのように対応すればよいでしょうか?
その親族が法定相続人等であるかどうかを確認する
亡くなった従業員の権利や義務は、法定相続人が相続によって引き継ぐのが原則です。そのため、残業代請求をしてきた親族が法定相続人であるかどうかを、まずは確認する必要があります。「故人とあなたの関係がわかる戸籍と簡単な相続関係図を出してください」と伝え、その結果「配偶者」「子ども」以外の親族であるとわかった場合や、法定相続人ではなくても遺言書により遺産の受取人となっている場合には、念のため司法書士や弁護士などに見てもらいましょう。
残業代の未払がないことを説明する
その親族が法定相続人等である場合、会社は残業代の未払がないことを説明する必要があります。直近2~3か月の給与明細を見せながら、故人の残業時間に対して会社が法定の残業代を支払ってきたことを説明しましょう。いつも給与計算を頼んでいる社労士がいれば、立ち会ってもらってもよいと思います。
説明に納得してもらえない場合には、「どの点に納得がいかないのか、あなたの言い分や根拠となる資料を後日書面で送ってください」とお願いしてみてください。
残業代の未払があると判明した場合の支払方法に注意!
もしも故人に残業代請求権があれば、会社は法定相続人等に残業代を支払わなければなりません。
もっとも、法定相続人の場合には法定相続分というものがありますので、その割合に従って支払うのが原則です。たとえば残業代の未払が10万円で、故人に妻と子ども2人がいれば、妻は2分の1(5万円)、子ども2人は4分の1ずつ(2万5,000円ずつ)が法定相続分となります。
ただし、遺産分割協議書や遺言書の記載によっては、支払うべき割合が変わることもあり得ますので注意しましょう。
このようなケースでの全体的な留意点
昨日まで普通に働いていた人が交通事故のような突然死を遂げた場合、親族(法定相続人等であるかどうかにかかわらず)が精神的・経済的に大きな打撃を受けることは間違いありません。心ない一言が原因で話合いがこじれて感情的になり、たとえば「残業で過労状態となり交通事故に繋がったのだから、死亡による損害も賠償してほしい」などの主張に発展することもあるのです。
親族の心情に十分配慮した丁寧な対応をすることが、円満解決のポイントです。
※この記事は、2023年12月18日に作成されました。