自社の製品を模倣されました。
目次
はじめに ~デザインを保護する法律~
意匠法による保護は、特許庁に費用を支払って登録されたデザインのみが保護されます。他方で不正競争防止法による保護は、特段の手続きは不要です。
製品が販売できるようになった日から3年間は、不正競争防止法2条1項3号により、デザインに保護が及びます。ただし、ありふれたデザインには保護が及ばず、また、他社製品のデザインが自社製品のデザインと実質的に同一でない場合には権利が及ばないので、専門家の判断が必要になります。
デザインを公表した日付の確認、他社製品の資料の収集と保存
不正競争防止法2条1項3号は、自社製品が販売可能となった日から3年間デザインを保護してくれるので、まずは自社製品をいつ発表したかを確認しましょう。
また、他社製品の販売日が3年以内かどうか、他社製品が自社製品と実質的に同一かどうかを証明するために、他社製品に関するSNSの投稿やオンライン販売ページなどの情報をスナップショットやPDFなどで保存しておきましょう。
また、デザインが実質的に同一かどうかを判断するために、可能であれば他社製品を一点購入しておくのも重要です。
実際の対応方法
自社製品のデザインがありふれているかどうか、他社製品のデザインが実質的に同一かどうかの判断は、製品のジャンルや過去に似たようなデザインの製品が存在するかどうか、客観的な資料がどの程度存在するかなどによって結論が左右され、判断基準も明確ではないので専門家に相談することをお勧めします。
自社製品のデザインが3年間の保護期間の範囲内で、かつ他社製品のデザインが実質的に同一といえる場合には、他社製品が掲載されているSNSの投稿やWEBページを削除し、販売を今すぐ中止するように警告書を作成して送付しましょう。権利侵害が成立する場合で、他社がすでに製品を販売している場合には、損害賠償を請求することも可能です。
SNSでの投稿や取引先への連絡は要注意
不正競争防止法上の権利侵害が実は成立しないにもかかわらず、他社がまるで権利侵害をしているかのようなSNSの投稿をしたり、取引先へ連絡をしたりしてしまうと、虚偽の事実を流したとして、こちらが逆に不正競争防止法違反になってしまうことがあります(不正競争防止法2条1項21号)。また、権利侵害が成立する場合でも、事実とは異なる記載を書きすぎてしまうと違反のリスクが生じます。
権利侵害が成立するか否かの判断と、SNSの投稿や取引先への連絡は慎重に行う必要があるので、まずは専門の弁護士に相談してからにするのがおすすめです。
補足 ~意匠権と不正競争防止法2条1項1号による長期間の保護~
不正競争防止法2条1項3号による保護は、自社製品の販売が可能な日から3年間という期間制限があります。しかし、より長く自社製品のデザインを保護したい場合には、意匠権を出願して保護する方法をとることができます。意匠権は自社製品を公表する前に出願しないと登録が少々難しくなるので、「このデザインは長期間保護したい!」という製品が完成した場合には、世間に公表する前に専門家に相談することをおすすめします。
また、特定のデザインが、「このデザインはあの会社の製品ですね!」というほどにとても有名になった場合には、権利保護の期間制限がない不正競争防止法2条1項1号によるデザインの保護の可能性もあります。ただし、この権利が認められるハードルはとても高いので、立証のための各種資料の収集がとても重要になります。
※この記事は、2023年10月19日に作成されました。