従業員からパワハラの相談を受けた際の初期対応を教えてください。
パワハラとは
パワーハラスメントとは、職場における1)優越的な関係を背景とした言動であって、2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、3)労働者の就業環境が害されるものをいいます(労働施策総合推進法30条の2参照)。
また、厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示5号)によると、パワハラに該当する代表的な類型としては、以下の6類型が挙げられています。
2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
企業が取るべき対応
パワハラの相談があった場合、被害を拡大させないために、まずは迅速かつ正確に、事実確認を行うことが重要です。事実確認は、中立的な立場で、相談者の了解を得たうえで、相談者の心情やプライバシーに配慮しながら実施しましょう。行為者には十分な弁明の機会を与えることも重要です。そして、事実確認の結果を踏まえ、行為者に対しては、懲戒処分や配置転換、関係改善の援助、注意指導等の適切な対応を行い、相談者に対しては、企業が講じた措置内容の報告やメンタルケア等を行う必要があります。
企業の責任
前記労働施策総合推進法により、企業にはパワハラ防止措置を講じることが義務付けられました。そのため、パワハラに対して適切な措置を講じなかった場合には、企業は安全配慮義務や職場環境配慮義務違反を理由に、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償責任を負う可能性があります(労働契約法5条、民法415条、709条)。裁判例においても、パワハラの相談に対して迅速に事実確認を行うことを怠ったことが職場環境整備義務違反に当たるとして、企業に損害賠償責任を認めた例もあります(大阪高判平24・4・6労判1055・28)。このように、パワハラの相談に対する適切な対応を怠ると、企業が損害賠償責任を負う可能性があります。
まとめ
以上のとおり、パワハラの相談に対して適切な対応を怠ると、企業が損害賠償責任を負う可能性があります。そのため、企業はパワハラの定義規定の内容等を踏まえ、迅速かつ正確に事実確認を行い、行為者及び相談者に対して適切な措置を講ずることが重要になります。
※この記事は、2023年10月25日に作成されました。