従業員が逮捕された際の対応方針を教えてください。
他方、当該従業員に対する処分などは、慎重な事実確認と本人の主張を確認した上で行う必要があります。こちらは、焦らず、じっくりと推移を見守る必要があります。
逮捕されたらどうなるのか?
逮捕された場合、最短でも1日~2日、その後10日~20日程度は、拘束が続くことを覚悟しなければなりません。
逮捕された容疑者は、捜査機関による取調などを受けます。捜査を経て、検察官が、容疑者が罪を犯したことは間違いないだろうと考え、かつ、刑事裁判にかけるべきと考えたときには、刑事裁判にかけられること(起訴)となります。
疑われている罪の重さにもよりますが、起訴された場合にはさらに拘束が長期になることもあります。起訴された場合には、裁判が開かれ、罪を犯したことが間違いないと考えられる場合には、刑罰を受けることとなります。
逮捕された従業員のためにできること
逮捕された従業員は、一刻も早く弁護人の援助を受ける必要があります。弁護人が早期に面会できれば、速やかに釈放されるよう活動したり、被害者と示談をしたり、無実を訴えるための適切な防御をしたりと、様々な活動が可能です。特にご相談の事案はそこまで重い罪ではないとも思われるため、早期の釈放も十分に期待できる類型の事件です。
経営者として従業員を守りたいと考えた場合、まずは信頼できる弁護士に面会に行ってもらいましょう。このとき、できれば、会社としていつも相談している弁護士ではない弁護士に面会に行ってもらうのが望ましいです。もし、事実を確認した結果、会社として従業員を処分しなければならないような事態になった場合、その弁護士が会社と従業員との関係で利益相反となってしまいかねないからです。
会社としての対応は?
一方で、従業員が逮捕されたこと自体が会社の評判にも影響するので、一刻も早く逮捕された従業員を処分したいと考える経営者もいらっしゃると思います。しかし、こちらは少し落ち着いて対応されたほうが得策です。逮捕されたからといって、罪を犯したとは限りません。会社として、まずはきちんとした事実確認をする必要があります。顧問弁護士等に相談しながら、慎重に調査をすべきです。処分などをする場合も、就業規則などのルールに則り、本人にも弁明の機会を与えた上、行為に見合った処分を行うべきです。
こうしたステップを踏まずに、逮捕直後に、逮捕された事実を理由に従業員を解雇したような事例では、解雇を無効とする裁判例も多いです。就業規則に起訴休職命令などのルールがある場合であっても、行きすぎた処分は無効となります。
なお、事件の内容や会社の規模によっては、マスコミ対応等を迫られる場合もあると思います。下手に従業員をかばうような態度を表明したり、逆に無罪推定に反するような態度を表明したりすれば、会社の評判にリスクが生じかねません。不用意なコメント等は避け、事態の推移を見守る方が良いでしょう。
まとめ
刑事事件は突然やってきます。
もし従業員を守りたいと思うのであれば、できるだけ早く弁護人の援助を受けられるようにしましょう。
他方で、会社として従業員を処分したり、対外的な対応が必要になったりした場合は、慎重に。まずは事実を確認し、本人の言い分も聞いた上での対応を心がけたいです。
※この記事は、2024年2月21日に作成されました。