仮差押えをされてしまった場合、どのように対応すればよいでしょうか?
そもそも仮差押えとは何か?
日本では、訴訟には、長い時間がかかることも多く、その間に債務者の財産状態が悪化してしまい、債権者が勝訴判決を得た時には、強制執行できる財産がない、というような事態が生じ得ます。仮差押えは、こうした事態に対応するための制度であり、債権者が、債務者に対して有すると主張する債権に関する訴訟(本案訴訟)の決着までの間、原則的に債権者のみの主張、立証に基づいて、暫定的に強制執行の対象となり得る財産の処分を制限するものです。
仮差押えがされるとどうなるのか?
上述した仮差押えの効力を具体的にいいますと、売却や担保設定といった処分が難しくなります(正確には、仮差押えを受けた財産も処分はできますが、訴訟で負けて、強制執行手続になった場合、処分の効力が否定されることになるため、処分の相手方を見つけるのは事実上困難です。)。また、債権であれば、第三者の弁済も禁止されます(預金であれば引き出せなくなります。)。
なお、預金や売掛金などの仮差押えを受けますと、当該金融機関や取引先にも分かるため、信用不安を招くという事実上の悪影響もあります。また、仮差押えを受けたことは通常、ローン返済の期限の利益喪失事由とされています。そのため、ローンの一括返済を求められることもあり得ますので、この点にも注意が必要です。
仮差押えへの法律上の対応手段は?
仮差押えは上記のとおり暫定的な措置ですので、本案訴訟に勝訴すれば、その効力は失われます。加えて、本案訴訟の決着前であっても、自身が関与しない手続で不利益を課される債務者のために仮差押えに対応する手段も用意されています。
例えば、被保全債権がそもそも存在しないというように、仮差押えが不当であるような場合、保全異議という手続が用意されています。また、仮差押え決定後に被保全債権が消滅したといった、所定の取消事由があるような場合、保全取消という手続をとることもできます。
他にも、同決定に定められた金額の仮差押解放金を供託することにより、対象財産を仮差押えから解放するといった手段もあります(その代わり、仮差押解放金については動かせなくなります。)。
具体的に何から始めればいいか?
まず、仮差押えによって影響のある取引先(金融機関、その他の仮差押えされた債権の債務者など)とコミュニケーションを取り、信用不安をできるだけ取り除くことが必要です。
その上で、被保全債権の存在を争うのであれば、本案訴訟において、勝訴を求めて訴訟活動を進めることになります。
また、それ以前に仮差押えに対応する必要があるのであれば、上述した各種の手続のいずれがとり得るのか、とり得るとしてどの手続をとるべきかを検討する必要があるでしょう。
ほかにも、訴訟外での相手方との交渉により、紛争の解決を図ることもあります(なお、本案訴訟や、保全異議等の手続中に和解が成立することもあります。)。
このようにとり得る手段は様々ですが、適切な対応策はケースバイケースで異なります。また、民事保全手続においては裁判官や書記官との独特のやり取りがあり、迅速かつ、専門的な判断や対応が必要になります。
そこで、できるだけ早く、仮差押えの分野を得意とする弁護士に相談されることをおすすめします。
※この記事は、2024年3月15日に作成されました。