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契約書の確認や契約書雛型の作成を専門家に依頼すべきでしょうか?

数年前にIT企業を立ち上げたのですが、取引先から提示された契約書に応諾して、契約を締結している状況です。取引先を信頼しておりますし、今のところトラブルが発生しているわけではないのですが、徐々に取引金額が増えてきていますので、そろそろ、専門家に依頼して、契約書の確認を受けることや、自社の契約書雛型を作成することを検討した方がよいのでしょうか。
契約書の内容によっては、思わぬところで、無用な出費が生じたり、事業上の制約やリスクが生じたりする可能性があります。また、同種の取引を多数行う場合には、自社の契約書雛型を利用することにより、契約交渉・締結を効率的に行うことができ、事業展開の促進にもつながります。
リスクを適切に管理しながら事業を展開するためには、専門家による契約書の確認や、自社の契約書雛型の作成が有用です。
回答者
水沼 利朗 弁護士
野村綜合法律事務所

契約書の意義

口頭での合意であっても契約は成立しますが、ビジネスにおける重要な契約や複雑な取引条件の契約の場合には、契約書を締結することが特に重要です。契約書の締結により、契約成立が証拠化され、当事者の権利義務の内容を明確化することができます。これにより、紛争を未然に防止することが期待でき、また、万一紛争が生じた場合にも、自らの権利義務の内容の証拠となります

取引先作成の契約書を詳細に確認することの重要性

取引先から提示された契約書を詳細に確認せずに契約を締結した場合、意図せず、不利な条件に合意してしまうことになりかねません。また、契約書の表現が曖昧になっており、当事者間でその解釈が分かれて紛争につながってしまうこともあるかもしれません。契約書の内容によっては、思わぬところで、無用な出費が生じたり、事業上の制約やリスクが生じたりする可能性があります。

そのため、取引先から提示された契約書について、自社が意図している条件が適切に反映されているかをしっかり確認することは非常に重要です

ここでは詳細は割愛しますが、IT企業が締結する業務委託契約書等で特に留意すべき契約条件の例として、以下のようなものが挙げられます。

契約の法的性質(請負か準委任か)、業務範囲の特定、当事者の役割分担 これらは契約上負う責任の範囲に影響します。
業務の過程で生じた知的財産権の帰属 たとえば、汎用的に利用可能な知的財産権を利用して事業拡大することを企図している場合には、その権利帰属や他案件での利用可否等の条件には注意が必要です。
第三者の権利を侵害していないことの保証、損害賠償 第三者の権利を侵害していないことの保証や損害賠償が無限定にされている場合、大きな潜在的リスクを負うことになりかねません。特に、ITビジネスにおいては、システム障害が生じた場合などの損害の範囲や金額を事前に予測することが容易ではないという事情もあります。

そのため、これらに対する限定は重要な契約条件の一つです。

契約書雛型の有用性

同種の取引を多数行う場合には、自社の契約書雛型を利用することにより、契約交渉・締結を効率的に行うことができ、事業展開の促進にもつながります。また、契約交渉に際して、自社が重視している検討項目の漏れを防止することができ、契約条件の管理も容易になります。もちろん、自社の契約書雛型を用いる場合であっても、個々の案件の事情に応じて、内容を柔軟に調整して活用することも必要です。

なお、取引先がこちらの契約書雛型を拒否して、取引先から契約書案の提示を受けることもあると思いますが、その場合であっても、自社が希望する条件が記載されている自社の契約書雛型の内容と比較検討することで、契約条件の確認・検討がしやすくなります。

まとめ

ビジネスにおいて、契約書は避けては通れないものです。特に、事業が拡大して取引数が増え、取引額が大きくなる場合には、それに応じてリスクも増えていくことになります。リスクを適切に管理しながら事業を展開するためには、専門家による契約書の確認や、自社の契約書雛型の作成が有用です。

 

この記事は、2023年10月17日に作成されました。

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