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工事代金を支払わない発注者から代金を回収する方法を教えてください。

建設業を営んでいます。
工事代金を支払ってくれない発注者がいるのですが、代金を回収するにはどうしたらよいですか?
発注者、元請け事業者から請け負った仕事を完成させたのに、支払日を過ぎても約束の工事代金を支払ってもらえないなど、支払いに関するトラブルは経営に大ダメージを与えることも少なくありません。具体的な状況や原因に応じて、的確、迅速な対応が重要です。

ここでは、①注文時に契約書や発注書を作成していなかった場合、②工事の遅延や瑕疵を理由に代金の減額を求められている場合、③発注者側の都合(資金繰りなど)で支払いが遅れている場合、の3つのケースについて説明します。
回答者
今西 大介 弁護士
今西総合法律事務所

工事代金不払いへの対応の重要性

工事請負契約では、多くの場合、代金のうち一部(または大部分、全部)の支払いが完工後に行われます。また、工事期間中に発生する人件費、外注費、材料費等のコストを施工業者側で負担(立て替え)しなければならないことが通常です。

工事を完成させた後に発注者や元請け事業者から支払いを拒まれた場合、それまでに投入した労力や立て替え費用を回収できずに多額の損害が生じ、会社の経営危機を招くことにもなりかねません。

そのため、代金不払いが発生した際は、具体的な状況に応じて、的確かつ迅速に対応することが極めて重要です。

具体的な状況ごとの対応方針

注文時に契約書、発注書を作成していない場合

建設業者間の取引では、受注時に契約書や発注書を作成していないことが少なくありません。
また、契約書等を作成している(または、建設工事標準請負契約約款などを利用する)場合でも、書面に書かれた内容が実際に話していた条件と大きく異なっていることや、工期中に追加工事が発生する(そして、追加工事分の契約書は作成していない)こともよくあります。もちろん、このようなトラブルが起きないよう契約書類を作成できていることがのぞましいですが、発注者の意向などの理由で作成させてもらえない場合もあります。

このような場合には、約束をした当時のやりとり(メール、LINE等)やその他の資料(設計図書、作業日報、出面表、社内資料等)を総動員することで、契約当時の約束の内容を主張立証することが重要です。
また、具体的な工事代金の合意が立証できない場合であっても、相当な報酬額(労務費、外注費、材料費などの諸経費と一定程度の会社利益)を約束していたことの主張立証によることも可能です。

工事の遅延や瑕疵を理由に代金減額を求められている場合

工事の仕上がりに不満がある、完成が遅れた等の理由により、発注者側から代金の支払いを拒まれるケースです。

しかし、本当にそのような問題があると評価すべき場合か(発注者側の過剰な要求ではないか)、施工業者が責任を負うべき場合かについては、慎重な判断が求められます。
また、仮に施工に問題や遅延があり、施工業者側が一定の責任を負うべき場合であっても、代金の支払い一切を拒むことは通常認められません。
施工業者としては、適切な代金支払いを受けられるよう、反論の材料を準備することが重要です。

発注者側の都合(資金繰りなど)で支払いが遅れている場合

発注者側の資金繰りが苦しいこと(たとえば、その現場の施主から元請けがまだ支払いを受けられていない等)などを理由に支払いが遅延するケースです。

まず前提として、貴社に対する代金支払い期限は、契約の直接の相手方(元請け事業者)との問題であって、元請けが施主や一次請け事業者からまだ支払いを受けられていないことは支払い遅延の理由にはなりません。
また、相手方の経営状態によっては、そのまま廃業してしまうこともあり得ます。相手の資金繰りが悪化しているケースでは、迅速に行動し、回収を目指すことが極めて重要といえます。

まとめ

昨今の人手不足や材料費高騰、さらにはいわゆる2024年問題(「働き方改革関連法」の猶予期間終了)など、建設業を取り巻く環境は厳しくなり、倒産件数も増加傾向にあります。

工事代金の不払いは、会社の経営危機を招きかねない一大事です。状況に応じて、迅速かつ的確に対応するため、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事は、2024年1月29日に作成されました。

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