TOPQ&A記事成果主義的な給与体系にしたいのですが、注意点を教えてください。
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成果主義的な給与体系にしたいのですが、注意点を教えてください。

弊社の給与体系は、成績によって差がつきにくいものとなっています。
しかし、会社全体の売上げ向上のために、成果主義的な給与体系に変更したいです。
どのような点に気を付けて方針を作成すればよいでしょうか?
成果主義的な給与制度への変更は、労働条件の不利益変更に該当するため、①労働条件の変更の必要性、②労働者の受ける不利益の程度、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況等の事情に照らして、合理的なものであることが必要となります。
回答者
五十嵐 沙織 弁護士
広尾有栖川法律事務所

給与制度変更の方針

成果主義的な給与制度を導入する場合、成績によって給与が増額する場合もあれば、減額する場合もあり得ますが、判例によれば、減額の可能性が存在する点において、就業規則の不利益変更に当たるとされています(ノイズ研究所事件・東京高裁平成18年6月22日判決)。

したがって、成果主義的な給与制度を導入する場合には、以下のような事情に照らして変更が合理的なものであることが必要となります(労働契約法10条)。

① 労働条件の変更の必要性

② 労働者の受ける不利益の程度

③ 変更後の就業規則の内容の相当性

④ 労働組合等との交渉の状況等

 

変更のポイント

給与制度変更の方針を作成する場合には、以下の4つの点がポイントとなります。

① 労働条件の変更の必要性

成果主義的な給与制度の導入が、高度な必要性に基づくものであることが求められます。実際の経営状況にもよりますが、裁判例でも、労働生産性を重視した成果主義的な給与制度への変更の必要性が肯定されています。

② 労働者の受ける不利益の程度

労働者の受ける不利益の程度としては、一概には言えませんが、裁判例では、月額で約11%減少する事案において合理性が肯定されています(東京商工会議所事件・東京地裁平成29年5月8日判決)。そのため、 5~10%程度の減額であれば問題は生じにくいものと考えられます。

③ 変更後の就業規則の内容の相当性

裁判例によれば、従業員に対して支給する賃金原資総額を減少させるものではなく、少なくとも3年間程度にわたって調整手当を支給するなどの激変緩和措置が採られている場合には相当性が認められています。

④ 労働組合等との交渉の状況等

給与制度の変更にあたっては、労働組合または従業員代表の意見を聴取し、従業員説明会を開催するなど、丁寧な説明の機会を設けることが重要となります。

その他の注意点

以上のとおり、成果主義的な給与制度の導入にあたっては、変更の合理性が求められます。

成果主義的な給与制度の下では、人事考課の結果によって従来よりも給与額に変動が生じることになります。そのため、前提となる人事制度の合理性評価の客観性公平性納得性が担保されていることがより重要となります。

したがって、成果主義的な給与制度の導入を行おうとする場合には、評価制度に関する課題を洗い出したうえで、会社の課題に応じて、評価基準の見直し評価者トレーニングの実施、360度評価の導入、評価調整の仕組み(キャリブレーション)の導入、目標設定面談やフィードバックのあり方の見直し等を合わせて検討することも必要です。

この記事は、2024年1月30日に作成されました。

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