LGBTQであることを従業員から告白された場合どう対応すべきでしょうか?
目次
性的指向あるいは性自認についての情報の取扱い
自分の意思で、他人に対し、自分がゲイである、レズビアンである、またはトランスジェンダーである等、性的少数者であることを告白することを「カミングアウト」「カムアウト」といいます。
従業員がカミングアウトした内容は、非常にプライバシー性の高い情報です。特に、性同一性障害の診断を受けているトランスジェンダーの場合には、個人情報保護法上の要配慮保護情報を含むこともあります。
したがって、カミングアウトの内容を、本人の了解を得ずに他の人に暴露すること(「アウティング」といいます)は、本人に対する深刻なハラスメントになり得ます。また、アウティング被害に労災認定がなされたケースもあるので、十分に注意して下さい。
なぜその従業員はあなたにカミングアウトをしたのか
今もなお、性的少数者は偏見を持たれ、嫌がらせを受けることもあります。したがって、職場でのカミングアウトはとても勇気がいることで、理由もなく、従業員がカミングアウトをすることはほとんどありません。ですから、なぜその従業員があなたにカミングアウトをしたのかを考えてみましょう。
① 困りごとがあり、相談のためにカミングアウトをした。
あなたの人柄を信頼し、あなたであれば話しても大丈夫だと判断してのカミングアウトです。職場で困りごとがないか聞いてみてください。自分を信頼してくれたことの御礼を伝えて緊張を解き、話しやすい雰囲気を作ることができればなお良いでしょう。
② あなたの言動を変えて欲しくてカミングアウトした。
職場や飲み会等において、性的少数者を揶揄するような発言をしていませんか。日頃の言動を点検してみましょう。その従業員に、過去の自分の言動に失礼がなかっただろうか、と聞いてみても良いかもしれません。
③ 差し迫った困りごとはないが、職場でも自分らしくありたいと考えた。
カミングアウトしても良いと思える職場は、心理的安全性が高く、従業員がより能力を発揮しやすくなります。カミングアウトを歓迎して下さい。ただこの場合でも、本人の了解なく、カミングアウトの内容を他人に口外してはなりません。
以上が参考例ですが、①②③に該当する場合でもそうでない場合でも、その人がすぐにカミングアウトをした理由を話してくれるとは限りませんし、理由は一つではないかもしれません。問いただすようなことはせず、本人の語りを待って下さい。
会社組織としての対応
カミングアウトをした理由が上記①(困りごとがあり、相談のため)のケースの場合、会社として何らかの対応が求められることがあります。まず、その従業員に対し、会社として対応を検討するため、情報を共有してもよい部署や役職、共有して良い情報の範囲をよく確認して下さい。その後の対応はケースバイケースですが、今回カミングアウトをした従業員以外にも、性的少数者がいる可能性は十分にあります。
会社へのコミットメントを高め、離職やメンタルヘルスの低下を防止するためにも、社内環境を見直してみましょう。例えば、同性パートナーシップ関係を結んでいる人も使える福利厚生制度(結婚祝金や家族手当、同性パートナーが産んだ子の育児休暇や同性パートナーの介護休暇等)、パワハラ・セクハラ防止規程の改定、相談窓口の体制強化、社内LGBT研修、男女で異なる制服や色分け等の廃止等が挙げられます。
※この記事は、2023年12月4日に作成されました。