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性的少数者にも配慮した採用活動をしたいのですが、どうすればよいですか?

昨今の社会全体の人権意識の高まりに合わせて、当社も性的少数者に配慮した採用活動をしていきたいです。どのような点に気を付ければよいですか?

性的指向や性自認に基づく差別は許されないとの基本的理解を前提とした上で、履歴書において性別欄の記載を必須にしない、採用面談時に性的マジョリティであることを前提とした発言・表現をしない、採用担当者に必要な研修を行った上で採用マニュアルに注意事項を記載しておくなどの対応をすることが考えられます。
回答者
寺原 真希子 弁護士
弁護士法人東京表参道法律会計事務所

理解増進法に基づく企業の義務

2023年6月施行の「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」には、「性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならない」(3条)との基本理念の下、企業が「普及啓発、就業環境の整備、相談の機会の確保等」を行う努力義務が明示されています(6条)。

これを踏まえ、採用の場面においても、性的指向や性自認に基づく差別は許されないとの基本的理解を前提とした具体的な対応が求められます。

当事者の困りごと

この点、厚労省作成によるパンフレット(「公正な採用選考をめざして」)には、性的マイノリティである当事者の「採用選考・就職活動時の困りごと」として、以下のような声が紹介されています。

  • 履歴書の性別欄に自認する性別と異なる性別を記載するのが苦しい。
  • 面接の際、性的マジョリティであることを前提とした質問にうまく答えられなかったら、性的マイノリティであることが分かってしまうかもしれないと不安。
  • 特定の人事の方を信頼してカミングアウトしたのに、次の面談のときに面接官全員が知っていて、アウティングをされていた。

具体的にどのような点に気を付けるべきか

履歴書における性別欄について

以上を踏まえ、第1に、履歴書等のエントリーフォームにおいて、性別欄の記載を必須としないという対応が考えられます。採用面談時においても性別の回答を強要しないようにし、性別欄の記載の有無が合否に影響を与えないようにする仕組みを整えるのがよいでしょう。業務上の必要性から性別を確認する必要がある場合は、必要な理由を説明して、本人に十分に納得してもらう必要があります。

採用面談時の注意点

第2に、「性的マイノリティだと採用してもらえない」という不安や、「性的マイノリティの存在に考えが及んでいない会社だ」という不信感を与えることがないよう、採用面談担当者においては、自らの発言が、応募者が性的マジョリティであることを前提とした表現となっていないか、常に注意することが大切です。会社のHP等の採用募集文言においても同様です。

また、応募者が自らの性的指向や性自認などを採用面談担当者にカミングアウトした場合であっても、そのことを本人の了承なく他の社員に伝えること(アウティング)は許されないことに留意する必要があります。

採用担当者への研修と採用マニュアルへの記載

第3に、採用担当者によって対応に差異が生じないよう、採用担当者に対して事前に必要な研修を行うとともに、社内用の採用マニュアルにも、ここまでに述べてきたような注意事項を記載しておくことが有用です。

その他

採用に関して考えられる主な対応は上記のとおりですが、会社には既に性的マイノリティである社員がいるはずです。性的マイノリティである社員を含むすべての社員が自分らしく働くことができるための社内環境の整備(全社員に対する研修、福利厚生対象の同性パートナーへの拡大、相談窓口の設置など)も、同時に進めておくことが求められます。

この記事は、2024年1月23日に作成されました。

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