海外企業とライセンス契約を締結する際の注意点を教えてください。
貴社は服飾品の製造販売をしているとのことですので、メーカーであり自社ブランドでの商品展開をしているものと考えます。ライセンスの対象となる権利(商標権、デザイン等を含むノウハウ等)により、注意する事項が異なることに留意して契約を締結しなければなりません。
商標権のライセンスの場合
商標権は、各国の国内法によりその権利の性質が定められます。日本で登録されている商標でも、ライセンスをしようとする国(「テリトリー」といいます)において商標登録されていなければ、ライセンサーの権利は保護されません。商標の保護の対象商品(「商品分類」といいます)が日本と異なる場合もあります。したがって、ライセンスのテリトリーである外国において対象商品に関する商標が登録されていることが確認することも必須です。商標登録がまだの場合には、テリトリーにおいて類似商標がないかなど、当該商標が登録できるかどうかにつき弁理士に確認することが必要です。ライセンシーに商標を取得させることもあり得ますが、ロイヤルティの回収が困難になる可能性があるためお勧めできません。
デザインを含むノウハウのライセンスの場合
デザインについては、提供の時期、回数、デザイン画の点数、サンプルのチェックと承認手続き等の細かい取り決めが必要になります。契約中に秘密保持条項を入れる必要性も検討されなければなりません。意匠権の登録ができるものについてはすべきであると考えます。
商品によっては模倣品が市場に出る場合がありますので注意が必要です。国によってはライセンシーが模倣品の流通について関与している場合すらあるので注意が必要です。複数のテリトリーに個別のライセンシーがいる場合には、並行輸入品についてライセンシーからクレームがつくこともあります。
ロイヤルティについて
定額ロイヤルティ、パーセンテイジ・ロイヤルティなどがあります。また、最初に契約金として、イニシャル・ロイヤルティを要求できる場合もあります。定額ロイヤルティは、毎年のロイヤルティ金額が売り上げにより変動しないもので、管理が容易です。ロイヤルティの金額は、その知名度により差が出ます。ノウハウも含めた契約では商標単独より高くなるのが普通です。最低販売額やミニマム・ロイヤルティを定めるのが良い場合も多いでしょう。ライセンシーの売上をどの程度管理できるかにより、どのようにロイヤルティを定めるのが良いか判断しなければなりません。対象国によっては、一括でロイヤルティの支払いを受けなければ回収できない恐れのある国もあります。
その他の注意点
国際契約ですので、ライセンサー、ライセンシーのいずれの国の法律が適用されるのか(準拠法)、どの国の裁判所で審理されるのか(管轄、仲裁機関によると定めることもできます)、契約書が複数の言語で作成される場合には、どの言語の契約書が正文であるのかなどの点も重要です。また契約終了後のライセンス製品の販売期間や、投げ売りされないような方策も必要でしょう。
※この記事は、2024年12月20日に作成されました。