喫煙休憩が長すぎる社員に対しどう対応すべきでしょうか。
対応1:賃金を減らす
月々の賃金を控除する
まず、喫煙時間が労働時間といえない場合、ノーワーク・ノーペイの原則に基づいて、その時間分の賃金を控除するという方法が考えられます。この原則は、「労働者が働いていない時間は、賃金を支払わなくてもよい」という考え方です。
ただし、賃金を控除できるのは、喫煙時間が「労働時間」といえない場合に限られます。緊急事態や命令指示があった場合に、いつでも仕事に戻ることができるときは、喫煙中であっても指揮命令下に置かれていたといえ、労働時間に該当しますので、その時間の賃金は控除できません。
賞与を減額する
次に、喫煙休憩の頻度、時間などを労働者の賞与額の査定に反映させるという方法です。賞与は、一般的に、勤務態度や業績などを総合的に考慮したうえで、使用者が自由に決定することができます。そのため、喫煙休憩の頻度や回数があまりに多い場合には、賞与額の査定において減額する事情として考慮することができます。
この方法は、喫煙休憩が労働時間に該当するか否かを判断できなくても、賞与の減額という形で反映できるという点でメリットです。ただし、喫煙者全員について賞与を一律不支給とするような対応は、かえって不公平感を与えることになりますし、不合理な対応として違法になるおそれもあります。
対応2:休憩時間を分割して与える
所定の休憩時間内で喫煙させるために、休憩時間を複数回に分けて付与するという方法があります。例えば、1時間の休憩を付与しなければならないなら、午前中に20分、お昼に20分、夕方に20分といった具合に3回に分割して与える方法が考えられます。
ただし、分割して与える休憩時間があまりに短いと、心身の疲労の回復という休憩時間の趣旨に反するおそれがあります。喫煙サイクルに配慮して休憩時間を与えるとしても、十分に休息ができる長さか否かを配慮する必要があります。
対応3:注意指導・懲戒処分をする
もう一つの方法として、喫煙休憩の多い労働者を注意指導したり、懲戒処分したりする方法があります。例えば、「1日2回、1回あたりの休憩時間は10分以内に収める」と喫煙時間を設定し、この設定時間を大きく超える場合に職務専念義務に違反するものとして注意指導等をする方法が考えられます。これにより、他の喫煙者に対する威嚇にもなり、以後の常識外れな喫煙休憩を予防することにも繋がります。
ただし、懲戒処分は、対象となる労働者の喫煙態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、無効とされてしまいます。たしかに長すぎる喫煙休憩は企業秩序を乱しますが、使用者には、手段として重きに比すものではないか、十分な検討が求められます。
対応にあたっての注意点
賃金を控除するのであれ、懲戒処分をするのであれ、問題とする喫煙休憩については、その時間を把握しておかなければ、労働者からの反感を買い、争いに発展しかねません。喫煙休憩を何回も繰り返す社員のなかには、無意識のうちに休憩をしている者もおり、喫煙時間を客観的に示すことができる証拠が必要になります。
※この記事は、2024年8月16日に作成されました。