分譲マンションの住民が私物を廊下に放置していることにどう対処したらよいでしょうか。
そこで、住民に対し、廊下から私物を撤去するよう申し入れることから始めます。それでも応じない場合は、動産撤去訴訟などの法的措置をとることになります。
マンショントラブルの背景事情
分譲マンションは、トラブルが発生しやすい施設です。それは、一つの建物内で多数の住民が生活するという本来的な性質に起因します。住民の年齢、家族構成、経済事情の差が大きく、当然趣味嗜好も異なるため、トラブルが起きやすいのです。
都心のタワーマンションであっても、私物を廊下に放置するような住民が出てしまうことにもこのような背景事情があります。
マンション問題の法的な取り扱い
分譲マンションの取扱いは、建物の区分所有等に関する法律、いわゆる区分所有法が規律しています。
もっとも、個々の分譲マンションは、その団体内部のルールとして管理規約や使用細則を定めることができます。そして、大多数の分譲マンションでは、国土交通省が作成した標準管理規約を参考に、管理規約を定めています。
実際のトラブルは、管理規約や使用細則などで対処できるかどうかをまず確認します。
問題解決のポイント
今回のように私物の放置では、使用細則に違反しないかを検討することになります。使用細則には、住民の禁止事項として「共用部分に私物に放置すること」が挙げられている例が多いからです。
もっとも、放置した住民に無断で私物を撤去することは、器物損壊、窃盗などとして住民側から非難されるリスクもありますので、強硬手段は避けましょう。
まずは、理事会から、私物を廊下から撤去するよう申し入れます。
とはいえ、私物を廊下に放置する住民は、私物の管理ができず、住戸内もゴミだらけということがよくあります。それが徐々に廊下にあふれ出ているとすれば、理事会が申し入れても撤去しない、という事例が多くみられます。
そのような場合は、動産撤去訴訟を提起して、撤去を強制することになります。提訴までされると、住民の方も私物を撤去することが多くなるだろうと思われます。
まとめ
このように、今回の事例でも、まずは理事会から申し入れ、それで応じなければ法的措置という手順を踏むとよいでしょう。
なお、一般に裁判では弁護士費用は各当事者が負担しますが、トラブルを起こした住民に対する訴訟では、管理組合が依頼した弁護士の費用を、住民側に負担させることが管理規約で認められていることが多いです。したがって、マンション問題では、管理組合が弁護士費用を徴収できる可能性があるという、大きな利点があります。
また、2024年の区分所有法改正で、管理不全共用部分管理制度を新設する案も出されています。申立人として想定されているのは主にマンション外の近隣住民ですが、廊下などの管理が不全な場合に、利害関係人の申立てによって、裁判所の命令で管理人を選任し、その管理人が私物を処分できるといった制度です。改正法が成立した場合には、この制度を利用できる可能性があります 。
※この記事は、2023年12月18日に作成されました。