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従業員からマタハラの相談を受けました。どのように対応すればよいですか?

当社の女性従業員から「妊娠を上司に報告したら『仕事どうするの?もう出世できないかもね。』と言われた」と相談されました。どのような対応をすればよいですか?
まずは、当事者の関係、当該言動がいつ、どこで、どのように行われたのか等を丁寧に聞き取り、相談者がどのような解決を望んでいるのかを確認してください。それに応じて事実調査の実施等を検討します。当該言動がマタハラと評価できる、またはそれに準じる不適切な言動である場合には、行為者への指導、処分を行います。
回答者
竹内 裕美 弁護士
弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所

マタハラとは

マタハラ」は、マタニティー・ハラスメントの略語であり、妊娠、出産、育児に関する不利益な取扱い(降格、解雇、雇い止め等)や嫌がらせによって職場環境が害されることをいいます。

マタハラには、①制度等の利用への嫌がらせ型、②状態への嫌がらせ型という2つの類型があります。前者は、産前休暇や軽易な業務への転換(労働基準法)、育児休業や時短(育児・介護休業法)といった制度の利用を希望する労働者に対し、不当な取り扱いを示唆するなどして制度の利用を阻害することや、制度を利用した労働者に嫌がらせをすることです。後者は、妊娠している労働者に仕事を全く与えない等、繰り返しまたは継続的な嫌がらせをすることです。

妊娠した部下に対して『仕事どうするの?もう出世できないかもね。』という本設問の発言は、上記②の状態への嫌がらせ型に該当する可能性があります。

マタハラの法的な取り扱い

職場におけるハラスメントは労働者の人格的利益を侵害し、就業環境を悪化させることから、行為者には損害賠償責任(民法709条、710条)が生じます。また事業主にも、職場環境を整備する義務を怠ったものとして損害賠償責任(民法715条、415条)が生じます。

男女雇用機会均等法9条3項は、事業主に対して女性労働者に対する妊娠・出産等を理由とする不利益な取扱いを禁止しています。また、育児・介護休業法10条は、事業主に対して育児休業を理由とする労働者(女性に限られません)に対する不利益な取扱いを禁止しています。さらに、男女雇用機会均等法11条の2と育児・介護休業法25条は、相談体制を整備するなど、マタハラの防止措置を講じることを事業主に義務付けています。

事業主がこれら法律に違反して、労働者に降格や解雇等の不利益な取扱いをした裁判例では、当該不利益な取扱いが無効とされ、行為者や事業主に損害賠償責任が認められています。

実際の対応時のポイント

相談があった場合には、迅速に対応しつつ、当事者と関係者のプライバシーに配慮することが重要です。事実確認のため当該言動の行為者や第三者にヒアリングする場合には、相談者の了解を得た上で行います。

再発防止策

マタハラは当事者間の法律問題であると同時に職場環境の問題です。事業主としては、同様の事案が生じないようにマタハラの背景にある要因を分析し、社内で研修を実施するなど適切な再発防止措置を講じることが必要です。

この記事は、2024年1月9日に作成されました。

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