メンタル不調による無断欠勤の従業員を解雇できますか?
はじめに~解雇の基本~
無期契約労働者(主に正社員)との労働契約を使用者の側から終了させる(解雇)には、客観的合理的理由と社会的相当性が必要です(労契法16条)。労働者による労務不提供は、それが改善されない場合、最終的には上記の労契法16条の要件を満たしますが、使用者としても一定の配慮を行ったうえで解雇をする必要があります。
また、実務上、多くの会社の就業規則中には、私傷病休職についての規定が存在します。これは私傷病による労務不提供の場合に、一定の療養期間を過ぎるまでは解雇を猶予する趣旨の制度と解されています¹。そのため、休職期間を経ない解雇は原則としてできないこととなります。
解雇の法的な取り扱い
休職規定が無い場合
社会に見られる多くの就業規則が、正当な理由の無い欠勤について、10日~2週間程度の欠勤を以て懲戒解雇事由としていることに鑑みると、原則的には、解雇には少なくとも2週間程度の欠勤が必要と思われます。また、仮にある程度の欠勤があっても、程なく治癒する見込みがあれば(※1)、解雇は認められない場合も多いでしょう。
休職規定がある場合
一般的には、私傷病休職規定の中に、休職を命じる要件として必要な欠勤の期間(程度)と、休職発令から解雇または自然退職扱いまでに与えられる療養期間が規定化されています。この場合には、規定内容に沿って、休職発令および療養期間付与を行い、療養期間が満了したにもかかわらず治癒しなかった場合(※2)に、解雇又は自然退職扱いとなります。
実際の判断時のポイント
実務では、上記2項の(※1)、(※2)の判断が困難な場合も少なくありません。いずれも最終的には医師の判断(診断書)によることとなりますが、メンタルヘルスの場合、その判断が医師毎に異なることも多々あります。この場合は、産業医の判断をべースにしつつ、それに反する医師の判断については、質問書や事情聴取面談等により、その根拠を確かめる手続を行うと良いでしょう。
- ¹ 菅野和夫著『労働法〔第12版〕』弘文堂、2019年、742頁
※この記事は、2023年10月19日に作成されました。