免税事業者に対し、仕入税額分の値引きを求めることはできますか?
インボイス制度を契機として、値引きを求めることができるか
インボイス制度が施行されると、免税事業者から仕入れた場合には、仕入税額控除ができなくなります。買い手は、売上の消費税額から仕入額の消費税額を控除して、消費税を納付するため、仕入税額控除できないとその分自ら負担しなければならないので、仕入税額控除できない分を値引きしたいと考えるでしょう。
この点、インボイスのQ&A7(参考文献参照)は、以下のように示しています。
他方で、そのような条件を満たさない一方的な値下げは、独占禁止法上優越的地位の濫用(対価の一方的決定)や下請法の買いたたきに該当するおそれがあるとしています。
仕入税額控除できなくなる金額
特例により3年間は8割、その後3年間は5割の仕入税額控除が認められています。そのため買い手は、すぐに100円の値引きを求めることはできません。
では、どのような範囲で交渉できるでしょうか。設例では、買い手は当初3年間について20円、その後の3年間は50円の値引きを求めてよいかが問題となります。
設例では、「免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮する」とは、6年後は、仕入控除額100円のうち免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税がどのくらいの金額になるかを交渉時に協議することになりますが、それまでは3年後までは8割、その後の3年間には5割相当額について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税が考慮されることになります。
しかし、だからと言って20円、50円を当然値引いてよいとは限らず、協議によって価格を決める必要があります。金額は指標とはならないということです。
価格転嫁との関係
現在は、価格交渉にあたっては、原材料価格、人件費、エネルギーコストの上昇による価格転嫁が重大なテーマとなっており、免税事業者との価格交渉は、価格転嫁による値上げとインボイス制度との関係で値下げの両方が混在することになります。双方が値上げと値下げの根拠を確認し、協議の上、価格を決めることが大切です。
※この記事は、2024年1月15日に作成されました。