内部通報窓口の設置のしかたを教えてください。
そのためには、①通報者の秘密が保持されること、②経営陣からの独立性が確保されていることが重要です。
内部通報制度とは
不正や不祥事を早期に発見するための仕組みとして、内部通報制度の重要性が高まっています。
内部通報とは、従業員等が、組織の不正等の情報を通報窓口に伝達することをいいます。本来は、企業における情報は、職制上のレポートラインで吸い上げられるべきものです。しかし、本来のレポートラインが機能しない場合に、必要な情報が吸い上げられるようにする仕組みが、内部通報制度です。内部通報制度により、企業として、早期に不正・不祥事情報を吸い上げ、早期に対応することにより、結果的に企業価値の毀損を防ぐことができます。
内部通報制度を設計するにあたっては、まず窓口をどこに設置するかという点を検討することが必要です。
そこで、以下では、窓口設置を検討するにあたってのポイントを解説します。
内部通報制度の法的な取り扱い
令和2年6月に公益通報者保護法が改正され、企業等の事業者に対し、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備が義務付けられることとなりました。ただし、従業員300名以下の事業者については、努力義務となっています。
このような体制整備を行っていない企業は、行政による勧告、公表の対象となります。
実際の対応のポイント
内部通報窓口を設置する際に考慮すべき最大のポイントは、通報者が安心して通報できるような仕組みにすることです。そのためには、①通報者の秘密が保持されること、②経営陣からの独立性が確保されていることが重要です。
また、通報方法としては、通報者の心理的な負担に配慮して、電話のみならず、FAX、電子メール、郵便等、様々な通報手段が取れるようにしておいた方がよいでしょう。
さらに、複数の通報窓口を設置することも検討するべきでしょう。この際、経営陣幹部から独立性を有する通報ルート、例えば、社外取締役や監査役へのルート、外部の法律事務所や民間の専門業者に委託することも、あわせて検討することも必要でしょう。
更に、内部通報制度を機能させるためには、社内研修や社内文書により、通報窓口が存在することを繰り返し周知するとともに、折に触れ、経営トップが内部通報制度の積極的な活用を促すなどの、継続的な施策が必要です。
内部通報制度を備えたとしても、結局ほとんど通報がない、といった企業が多く存在するということも事実です。内部通報制度が、不正防止という観点から使いやすいものとなっているかについて、制度の在り方を見直し、より適切な体制に変えていく努力も必要です。
仮に通報内容が通報にふさわしくないものであったとしても、それを咎めるような対応は、かえって通報者を委縮させ、ひいては内部通報が使われないこととなってしまいます。内部通報を活性化させる観点から、取るに足らないと思われる通報に対しても、真摯に対応を行い、窓口の信頼性を高めていくことが必要です。
まとめ
今回は、内部通報窓口の設置に絞って解説しましたが、他にも、内部通報でもたらされた情報に関する調査にあたり、通報者の匿名性に配慮するなど様々な注意が必要です。これについては、参考文献に記載した指針等を参照してください。
※この記事は、2023年12月26日に作成されました。