秘密保持契約の基本的なチェックポイントを教えてください。
目的
はじめに開示・利用の目的が定められているかを確認します。NDAを必要とする典型例は、取引の可能性を検討するというマッチングの場面で、お互いに開示しあった情報の、取り扱いルールを定めるものです。冒頭部分などで「○○に関する取引の検討」というような目的が適切に定められていることを確認しましょう。
秘密情報の定義と除外規定
個別指定を必要とするか
次に、大別して、個別に「秘密情報」であるとの指定を必要とするかどうかのルール設定があります。結論としては、実態に合っていればどちらでも構いません。むしろ、ここは運用のほうが重要で、個別指定を必要としないルールだとしても、一見して秘密情報であることがわかる「マル秘」マークを付して情報を開示したほうが、誰にとっても明確で、注意をしてもらえるため、お勧めです。
除外規定の確認
秘密情報には、必ず除外が必要です。具体的には次のとおりです。
次の各号にあたる情報は「秘密情報」から除外する。
(1)開示の時において既に公知である情報
(2)開示の時において受領者が既に保持していた情報
(3)開示後に、受領者の責に帰すべからざる事由により公知となった情報
(4)開示後に、正当な権限を有する第三者より受領者が秘密保持義務を負うことなく得た情報
(5)受領者が機密情報によらず独自に開発した情報
もし、これらに加え、法令や裁判所の命令、行政機関の要請等に基づいて第三者へ秘密情報を開示する場合(以下「法令に基づく開示」といいます。)を秘密情報から除外する規定があれば、それは誤りなので、削除が必要です。法令に基づく開示は記載しなくとも契約違反になりませんし、証券取引所への報告など法令に基づいて開示した情報が公知になれば上記(3)として扱うので不都合はありません。むしろ、税務調査で秘密文書を開示することはありますが、それが公になることはありません。そういった場合まで秘密保持義務を解除してしまうのは問題があります。
有効期間
有効期間は自由に決めてよいですが、目的との関係で、例えば、契約締結交渉を目的とするNDAであれば、交渉に必要な期間(例えば1年間)や目的達成をもって失効するような条項を入れるのが適切だと考えられます。
秘密情報の使用・管理に関するルール
その他の条項が定める秘密情報の取り扱いに関する細かなルールについては、自社の実情や取引の実態に合致するのかを確認しましょう。例えば、秘密情報の使用・管理に関するルール(秘密情報にアクセスできる人の制限や、複製・移転のルール)や、契約終了後の秘密情報の抹消のほか、事故発生時の検知、初動対応や損害賠償、差止請求を含む事後処理などが定められていることが多いです。
不利益な規程(落とし穴)を検知して削除
実際にあった事例として、NDAにおいて、ビジネスパートナーに関する契約に盛り込まれることのある「競業禁止」、再委託(孫請け)の業務委託契約で見られる「発注元との直接契約の禁止」、また、人材派遣やSES契約で見られるような「引き抜き禁止」に関する規程が入ったものに接したことがあります。いずれも具体的な取引に関する規定であり、本来はその取引に関する契約書に記載するべき条項です。NDAだと考えて見逃してしまうと、結果、一方的に義務だけを負う「落とし穴」となる可能性があるものでした。このように、一方だけに禁止を謳う規程があれば、NDAの目的と関係があるものかどうかを確認して、有害なものは削除する必要があります。
NDAは契約ですから、判断が難しい問題については必要に応じて弁護士によるリーガルチェックを受けられることをお勧めします。
※この記事は、2025年1月24日に作成されました。