「ノーアクションレター」とはなんですか?
民間企業等が、法令解釈の明確化を図り迅速に新規事業を進めていくうえで有用な制度であるといえます。
目次
ノーアクションレター制度とは
日本版ノーアクションレター制度は、正式には「法令適用事前確認手続」という名称で呼ばれています(以下「ノーアクションレター制度」といいます)。
ノーアクションレター制度とは、民間企業等が、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、当該行為が特定の法令の規定の適用対象となるかどうかをあらかじめ当該規定を所管する行政機関に確認し、その機関が回答を行うとともに、当該回答を公表する制度です。米国の証券取引委員会(SEC)が採用する制度を参考にしています。
行政機関が、当該行為が法令に抵触しないと考える場合には、当該行為に対して特定の対処を行わないことを回答することになりますので、「ノーアクションレター」制度と呼ばれています。
どのような場合にノーアクションレター制度を使用できるか
対象
対象となる法令は、民間企業等の事業活動に係る法令ですが、各府省の判断により、その他の分野に係る法令を対象にすることがあります。対象となる具体的な法令は、各府省がウェブサイトで公表しています。
また、この制度の対象となるのは、上記法令の条項のうち次のいずれかに該当するものです。
- 当該条項が申請に対する処分の根拠を定めるものであって、当該条項に違反する行為が罰則の対象となる場合
- 当該条項が不利益処分の根拠を定めるものである場合
- 当該条項が民間企業等に対して直接に義務を課し又はこれらの権利を制限するものであって、本手続の趣旨にかんがみて対象とすべきものと判断される場合
照会手続
照会手続は、以下のルールに基づき実施されます。
- 将来自らが行おうとする行為に係る個別具体的な事実を書面(電子的方法を含む。)により示すこと。
- 各府省が確定、公表した条項のうち、適用対象となるかどうかを確認したい法令の条項を特定すること。
- 照会及び回答内容が公表されることに同意していること。
なお、照会者名については公表に同意しないことができますが、照会対象法令の性質上照会者名を公にすることが回答に当たって必要とされる場合は、照会者名の公表の同意を求められることがあります。
ノーアクションレター制度による回答及び公表
回答
回答期間は、原則として、照会者からの照会書が照会窓口に到達してから30日以内とされています。但し、慎重な判断を要する等の場合には30日を超える回答期間を要することがあります。
回答は、原則として書面(電子的方法を含む。)により行われます。
各府省は、照会者からの照会に対し回答を行うことができない場合又は回答を行うことが適当でない場合については、回答を行わないことができます。この場合、照会者に対し、理由が通知されることになります。
公表
照会及び回答内容は、原則としてそのまま公表されることになります。また、照会者の同意がある場合は照会者名が公表されます。
照会及び回答内容は、原則として回答を行ってから30日以内に公表されます。但し、照会者の希望により公表が延期されることがあります。
ノーアクションレター制度は、照会及び回答内容の公表を前提とする制度です。そのため、新規事業の具体的な情報を競合企業に察知されるおそれがあるなど、特に守秘性の高いケースにおいては、照会の具体的な内容を含め慎重な検討を要します。
まとめ
ノーアクションレター制度は、民間企業等が法令解釈の明確化を図り迅速に新規事業を進めていくうえで有用な制度です。法令解釈に関わるものであり、制度には留意点がありますので、弁護士に相談のうえ制度を活用されることを推奨いたします。
※この記事は、2024年10月25日に作成されました。