非上場企業で不祥事が起きた場合、どんな影響が出るのでしょうか?
とはいえ、不祥事でニュースになるのは上場企業というイメージがあるのですが、非上場企業で不祥事が起きた場合、どのような影響が出るのでしょうか?
顧客・取引先からの信用低下
非上場企業の不祥事が発覚すると、顧客や取引先からの信頼が急速に失われ、契約解除や取引停止のリスクが高まります。例えば、品質管理の不備による製品不良が発覚した場合、製品やサービスの信頼性が損なわれ、売上が急減する可能性があります。また、個人情報の漏洩のケースでは、顧客からのクレームが相次ぎ、企業の評判が大きく傷つくことが考えられます。反社会的勢力との関係が明らかになったような場合は、近時の企業の反社会的勢力対応についての要求水準の高まりから、取引先や金融機関から取引を停止・解消される場合もあり、経営上深刻な影響を及ぼします。
社会的な影響
非上場企業であっても、不祥事が発覚した場合、地域社会や業界全体に悪影響が及びます。地域社会からの信頼が失われると、地元住民や行政との関係が悪化し、地域での事業活動が制限されることもあります。例えば、環境規制違反による地域環境への影響が発覚した場合、地元住民からの反発を招き、操業停止に追い込まれることもあります。また、食品業界で異物混入事件が発生したような場合は、その業界全体の製品に対する消費者の信頼が低下し、売上減少につながることがあります。企業の事業遂行過程における不祥事のみならず、従業員による私生活上の法令違反(例えば飲酒運転や暴行事件)であったとしても、これが報道されることにより、企業の社会的信用が大きく損なわれることがあります。さらに、近年はSNSの発達により、従業員による不適切投稿(いわゆる「バイトテロ」など)が行われ、瞬く間に情報が拡散された結果、当該企業にクレームの電話が相次ぎ、店舗が閉店に追い込まれ、結果的に当該企業が破産に至ったケースもあります。
財務上の打撃
非上場企業において不祥事が発生した場合、当該不祥事により企業が負担する損害賠償責任や、企業が被る直接的な金銭的被害により、財務上深刻な影響を生じることがあります。例えば、個人情報の漏洩があったケースでは、被害者である本人に対して、プライバシー権侵害による不法行為責任(使用者責任)に基づく損害賠償債務を負う可能性があります。また、従業員が他の従業員にセクハラ・パワハラなどを行った場合は、使用者責任や雇用契約上の職場環境配慮義務違反を理由に、企業も損害賠償債務を負う可能性があります。さらに、従業員により業務上横領や架空発注などの犯罪行為が行われた場合は、企業に直接的な金銭的被害をもたらします。
上記のような損害賠償の負担、訴訟対応や再発防止などに要する費用、犯罪行為による金銭的被害は、非上場企業にとって深刻な財務上の打撃を与え、企業存続の危機を招くこともあります。
まとめ
非上場企業の不祥事は、以下の三つの主要な影響を及ぼします。まず、顧客や取引先からの信頼が急速に低下し、契約解除や取引停止のリスクが高まります。次に、地域社会や業界全体への悪影響があり、環境規制違反や従業員の法令違反が原因で、事業活動が制限される可能性があります。最後に、損害賠償や犯罪行為による金銭的被害が企業の財務に深刻な打撃を与え、企業存続の危機を招くことがあります。
これらの影響を最小限に抑えるためには、事前のリスク管理や内部統制の強化が重要です。また、不祥事発生時には迅速かつ透明性のある対応が求められます。
※この記事は、2024年7月5日に作成されました。