NPOとコラボするうえでの注意点を知りたいです。
また、自社の従業員を会社の社会貢献活動に参加させる場合には、労働法上の問題を生じることのないように注意する必要があります。
NPOとの取引における留意点
企業とNPOの取引を法務の観点からみたとき、多くの点は通常の企業間取引と共通しますが、NPOの特徴や活動の特色を踏まえて留意が必要な点もあります。
NPOの性質・実態の把握
NPO(Non-Profit Organization)は、継続的、自発的に社会貢献活動を行う、営利を目的としない団体の総称です。そのため「NPO」には、法人格を有する団体(特定非営利活動法人(NPO法人)、公益社団法人・公益財団法人など)だけでなく、法人格を有しない任意団体(ボランティアサークルなど)も含まれます。
NPOとの連携・コラボレーションを検討する場合、当該NPOが法人格を有するか否か、法人格を有する場合にはどのような性質の法人であるかを把握する必要があります。
任意団体との連携を考える場合、任意団体は契約や権利義務の主体となれないのが通常ですので、契約関係をどのように整理するか(例:団体の代表者との契約とするか・問題が生じた場合の責任の所在をどのように明確化するか等)を検討する必要があります。
また、法人格があるNPOと連携をする場合、その法人の法的性質を把握しておくことが有益です。例えば、特定非営利活動法人(NPO法人)は、「特定非営利活動」を主たる目的とする法人であり(特定非営利活動促進法第2条第2項)、定款に記載のない新たな取り組みをする際には定款変更のために所轄庁の認証が必要となるなど、株式会社とは異なる点があります。なお、NPO法人は会計や事業に関し一定の情報公開が法律上義務付けられているため、連携を開始する前にNPOのホームページや内閣府のポータルサイトなどで、活動の規模や内容を把握することができます。
自社の従業員との関係
NPOとの連携の一形態として、NPOの行う活動に自社の従業員をボランティアとして参加させるケースがよくみられます。この場合、従業員によるボランティア活動が、会社の業務として行われるものなのか、あくまでも従業員の任意の参加による業務外の活動なのかは、厳密に区別する必要があります。
特に後者(業務外のプライベートな活動)として整理する場合においては、会社は、ボランティア活動について参加を強制しないようにするとともに、実際のボランティア活動の際にも業務上の上下関係を前提としたような指揮命令関係が生じないよう配慮する必要があります。業務外の活動として整理したにもかかわらず、実質的には会社に対する労務提供であると判断されますと、労働法上の諸問題(時間外労働等の問題)を生じることとなりますので注意が必要です。
おわりに
近時、企業による社会貢献活動・地域貢献活動について、社会全体の関心が高まっています。企業とNPOとの連携のあり方も、寄付や従業員によるボランティア参加といったものだけでなく、イベントの共催、事業を通じた協働など、多様化しています。
連携を有意義で持続可能なものとするためにも、特にスタート段階で、本稿で触れた観点も含め、法的な論点を把握・整理しておくことが重要です。
※この記事は、2023年11月9日に作成されました。