音信不通の従業員を退職扱いにする際の手続きを教えてください。
退職扱いとしたいのですが、どのような流れで進めればよいでしょうか?
その後、無断欠勤が2週間以上続いている場合には、普通解雇または懲戒解雇の手続きを取り、解雇通知をします。
貴社の就業規則に、一定期間の音信不通の場合に自然退職扱いとする旨の規定がある場合には、当該規定に基づいて退職したものと扱うことも考えられます。
欠勤理由の調査
音信不通になっているということは、無断欠勤をしているということになります。無断欠勤は、一般的に普通解雇事由または懲戒解雇事由に該当するため、普通解雇または懲戒解雇によって退職させることが考えられます。
しかし、無断欠勤の原因が病気、けが、逮捕または何らかの事件に巻き込まれた等、従業員の責めに帰すべき事由がないものであった場合には、不当解雇となってしまう可能性があります。
そこで、まずは、可能な範囲で無断欠勤となっている原因を調査し、従業員に責めに帰すべき事由がないかを確認する必要があります。
解雇通知の方法・解雇予告
解雇通知の方法
解雇をした場合には、解雇通知をする必要があります。しかし、音信不通の従業員に対しては、自宅に解雇通知書を送付しても届かない可能性が高いです。
このように従業員の行方が分からない場合には、裁判所を通じた公示送達によって解雇通知をする必要があります。
なお、従業員の家族に対して解雇通知をすることも考えられますが、従業員に対する通知とは認められない可能性もあります。
解雇予告
解雇をする場合には、解雇予告もする必要があります。ただし、2週間以上の無断欠勤であり、出勤の督促にも応じない場合には、労働基準監督署の除外認定を受けることにより、解雇予告が不要となる可能性もあります(労働基準法20条)。
帰責事由がないことが判明した場合の対応
事前の調査では判明しなかったものの、解雇した後になって無断欠勤につき従業員に帰責事由がないことが判明した場合には、当該解雇は不当解雇となってしまう可能性があります。
この場合、従業員から希望があれば、これに応じて復職させることも検討する必要があります。
自然退職
「無断欠勤が○日以上続いたときは退職したものとみなす」等の文言が就業規則に規定されている場合、当該規定に基づいて、退職したものと扱うことも考えられます。
ただし、解雇と同様に、無断欠勤について従業員に帰責事由がない場合には、退職扱いが無効となる可能性があります。
無断欠勤をもって退職の意思表示と扱うことの可否
音信不通となっていることをもって退職の意思表示とみなし、自主退職したものと扱うことも考えられます。
しかし、裁判実務において、黙示の退職の意思表示は簡単には認められません。
本人が出勤しないことを予告していただけでなく、同僚や取引先に対して退職の挨拶をしていたり、社内の私物を整理していたり、退職の意思表示があることが明確である場合には、退職の意思表示があったものと認められる可能性もあります。
※この記事は、2024年2月7日に作成されました。