当社メディアの海賊版サイトを見つけたので、対応方針を教えてください。
目次
権利者は誰?
まず、貴社のオウンドメディアの著作権者は誰なのかを確認します。当然その企業が著作権者だろう、とも思われるのですが、実際はそうとは限りません。
オウンドメディアのコンテンツを社内で作成しているのであれば、基本的には貴社が著作権者といってよいでしょう。
これに対し、外部にコンテンツ作成を委託しているのであれば、まずは実際にそのコンテンツを作成した者が著作権者となります。その上で、コンテンツの作成者から貴社が著作権の譲渡を受けているのであれば、貴社が著作権者となります。
簡単ではない著作権侵害の判定
「創作性」が必要
次に、オウンドメディアを構成する具体的な表現について、どのような権利侵害が実際に発生しているのか検討します。今回のケースでは、「構成や文面などが全く同じ内容」だということですから、著作権のうち主に複製権の侵害が問題となります。
注意を要するのは、複製が問題になる部分が、著作権法による保護の対象となるための「創作性」を備えているかどうかです(著作権法2条1項1号)。文章自体がごく短く、あるいは表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や,ありふれた表現である場合には創作性が否定されてしまいます。
裁判例を踏まえて
知財高裁平成23年5月26日判決では、データ復旧サービスに関するオウンドメディアにつき同業他社がほぼ一致するような表現をしたのですが、著作権侵害が否定されました。その主な理由としては、双方の文章表現は、その構成や記述全体を考慮しても、ありふれた創作性のない部分において同一性を有するにすぎないといったものでした。
他方で、利用規約の表現について、同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述していること等に着目して創作性を肯定した裁判例(東京地判平成26年7月30日)などもあります。
こうした裁判例の傾向を踏まえると、コピーされた貴社のオウンドメディアの具体的な表現において独自の工夫が見られるかどうかがポイントとなるでしょう。このように、著作権侵害の判定は簡単ではないため、権利侵害だと断定して行動する前に慎重な検討が必要です。
削除請求をどうする?
運営者に対する請求
海賊版サイトの運営者が判明している場合は、直接、侵害警告をして削除を求めることになります。相手が任意に応じなければ、裁判所において削除仮処分手続をすることになります。
サービス提供者・サーバー業者等への請求
運営者が判明していない場合や、そもそも運営者に直接削除請求したくない場合は、海賊版サイトが利用しているサービスの提供者や、サーバー業者等に対して削除請求(送信防止措置依頼)をすることが考えられます。もっとも、上記のとおり著作権侵害の判定は簡単ではありませんから、デッドコピー(ほぼ丸写し)事案でもない限りは、むしろ裁判所での削除仮処分手続が有力な選択肢となります。
検索結果の削除
検索結果の削除であれば、検索サイトのフォーム等からDMCA(米国デジタルミレニアム著作権法)に基づく手続をします。
SNSやプレスリリースは利用すべきでない
SNSやプレスリリース等で広く被害を訴えることについては慎重であるべきです。その行為が不正競争防止法における営業誹謗行為等にあたるとして、かえって損害賠償責任を負うリスクがあります。
※この記事は、2024年10月30日に作成されました。