パート社員から正社員と同様の賞与付与を求められました。
同一労働同一賃金とは
パートタイム・有期雇用労働法(以下「法」といいます)8条は、「基本給、賞与その他の待遇」について正社員とその他の雇用形態の労働者との間で不合理な待遇差を設けてはならないと規定しています。パート社員や賞与もその対象であり、厚生労働者はこれによって「同一労働同一賃金」の導入をするものだといっています。
同一労働同一賃金は、平たく言えば、同じ仕事をする社員には雇用形態にかかわらず同じ賃金が支払われるべきだという考え方です。賞与について言えば同一の貢献には同一の支給がなされるべきだという言い方ができます。他方で、合理的な待遇差は禁止されませんので、何が合理的で何が不合理なのかを考えることが重要です。
同一労働同一賃金の具体例
正社員とパート社員とで雇用形態が異なっていても、フルタイムのパート社員でしかも労働の実態が全く同様であれば、賞与に差を設けることは不合理と判断されます。また、労働時間数以外の差がない場合に、労働時間数に応じた差を設けることは別としてパート社員は一律に賞与ゼロとするような場合は不合理といえます。しかし、業務内容、業務に伴う責任の程度、職務内容や配置変更の範囲等に差があれば、その具体的内容にもよりますが合理的な待遇差であるという余地が出てきます。例えば、不良品発生時の緊急対応や残業は正社員のみが行うとか、正社員にのみノルマが課されてその達成状況に応じて待遇上の不利益が生じうるような差がある場合には、賞与支給の有無に差があっても合理的といえます。
客観的、具体的な実態をもとに判断される
職務内容の差の有無等は具体的な実態をもとに判断されます。
例えば、正社員のみ転勤等がありうることとなっていても、実際には転勤を命ぜられる正社員は過去にほとんどいないという現場の状況がある場合には、転勤等の抽象的可能性があることをもって合理的な待遇差であると説明することが難しいといえます。ですので、仮に社内規定上は正社員とパート社員で責任などを区分していても、現場においては規定どおりに運用されずに差があいまいである場合などは不合理な待遇差であると判断される可能性が高くなります。
他方、業務内容のほとんどが重複しうるとしても、上述したような緊急対応を正社員のみが行う実態の場合、責任において大きな差があります。この場合、緊急対応の発生頻度は低いとしても待遇差を設ける合理性を認めやすいと言えるでしょう。
また、賞与の支給目的ないし基準によっても合理性の判断に差を生じる可能性がありますので、自社の賞与規程や支給実態を見直す必要もあります。
対応のまとめ
パート社員から求められたとき、会社には待遇差の理由について説明すべき義務があります(法14条2項)。したがって、上述した観点を踏まえていつでも説明できるように準備しておくことが必要です。パート社員からは正社員固有の職務や責任について見えにくい可能性もありますので、説明に当たってはその点を意識すると納得を得やすいでしょう。また、その説明準備にあたっては、自社の賞与規程、支給実態、正社員とパート社員との職務内容やその責任の差に関する定めの有無内容、実際の運用等を見つめ直しましょう。そのうえで、合理的な待遇差を設けられているか、現場運用の見直し等も含めて再検討するのが良いのではないでしょうか。
※この記事は、2024年5月20日に作成されました。