パワハラに「穏便に」対応するよう相談されました。どうすればよいですか?
ただ、その際「報復が怖いのでできるだけ穏便に対応してほしい」との要望を受けました。どのように対応すればよいでしょうか?
パワハラ悪化の構造
「仕事のできる上司」が「行き過ぎた指導」の結果としてパワハラを行うケースが非常に多く見られます。そのような上司は、自身の行為がパワハラに該当しているとの自覚に欠け、むしろ会社のためにはこのくらい当然だ、と考える傾向にあります。
火に油を注ぐのではないかと危惧して周囲も声を上げにくく、事態が深刻化することも少なくありません。
多くのパワハラは段階的に悪化します。悪化の構造を4段階にまとめました。
パワハラ事案への対処
相談を受けた場合、まずは当該事案が就業規則上のパワハラに該当するかどうかを調査・判断します。相談者がパワハラだと主張しても、実際にはパワハラとまでは言えないケースもあります。
当該上司の言動が就業規則上の懲戒処分の対象となる場合には懲戒処分を検討し、懲戒処分の対象とはならない場合でも、職場環境として改善が必要であれば、(懲戒処分ではない人事上の)厳重注意などを実施して改善を促すことになります。
それと同時に、調査結果を踏まえ、異動などによって当該上司と相談者の「切り離し」を実施し、相談者の精神的負担の軽減を図ります。相談者が望む場合には、相談後迅速に、相談者の異動を検討することも重要です。
相談者への報復の防止
相談者は、相談後にパワハラが激化するのではないかとの不安を抱くのが通常です。
会社としては、就業規則に従って当該上司の処分を検討するとともに、以下の措置をとることになります。
①相談者に報復した場合にはさらなる処罰の対象となることを、当該上司に明確に伝える。
②当該上司から相談者に対して不適切な言動がないか定期・不定期に継続的モニタリングを実施する。
また案件によっては、具体的調査の過程でどうしても相談者が誰であるか当該上司に推測されてしまうことがあります。相談者がそのようなリスクを負うことに消極的である場合には、無理に調査を進めずに、管理職を対象としたハラスメント研修等の枠組みのなかで、相談者の存在を知られないように、当該上司に注意喚起を図ることになります。
パワハラ予備軍への対策
パワハラを未然に防止するためには、自覚のない「パワハラ予備軍」の段階から、弁護士等による社内研修や個別面談(カウンセリング)を実施して、昨今の時世のなかでどのような言動が懲戒処分の対象となるか(昔の価値観のままではいかに危険か)、自身の地位にどのようなリスクがあるか、ということを伝えて、自覚を促すことが効果的です。
また、社内向けに標語を掲示して啓発することも効果的です(参考:「パワハラ防止10か条」)。
※この記事は、2023年12月19日に作成されました。